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【活動報告】キリン「長次郎」骨格標本を解体しました

(更新日2025.02.06)

 1月21日に一号棟2階で展示されていたキリン「長次郎」の骨格標本の解体が行われました。長次郎の骨格標本は、現存する日本の動物園生まれのキリンの標本としては最も古いものです。長次郎の骨格標本は長年にわたり本学で展示され続けていましたが、標本の劣化や倒壊が心配されていました。そこで、標本を組み立てられた状態から解体し、バラバラの状態にして保管することを決断しました。(長次郎の詳しい来歴や解体の経緯についてはこちらのページをご覧ください)

▲解体前の長次郎

 解体当日は長次郎の周りに脚立を設置し、頭蓋骨から順に取り外していきました。頭蓋骨は落下を防ぐために2023年に補強工事を実施しています。頭を支えるための金属プレートがネジで固定されているため、ネジをひとつずつ外してから、慎重に頭蓋骨を回収しました。
 頭を取り外した後は首の骨(頚椎)に取り掛かりました。頚椎の中心には、骨格標本の軸となる太い金具が入っており、頚椎同士は細い針金で連結されています。解体作業では、針金を第一頚椎側から切断し、7個ある頚椎を上から順番に軸から外していきました。
 高い位置にある頭蓋骨と頚椎の回収が完了したら、次は四肢と骨盤の回収です。前肢は肩の骨(肩甲骨)から足先の骨を、後肢は太ももの骨(大腿骨)から足先の骨を、それぞれつながった状態で回収しました。長次郎の四肢の長さは2m近くあり、つながったままの状態で保管すると場所を取ってしまいます。そのため、回収した四肢を別の部屋に移して肩・肘・膝の関節を固定している針金をカットし、骨ごとに保管できる状態にしました。ただし、手首(主根関節)や足首(足根関節)は細かな骨が複雑に組み合わさっているため、バラバラにならないよう、できる限り針金でつなげたままにしました。
 長次郎の展示場所は木の柵で囲まれているため、残りの骨(胸骨、肋骨および胸椎・腰椎・仙椎・尾椎)の解体は、柵の横のスペースに骨を移動させて行いました。胸骨とそれに繋がる肋軟骨は劣化が進んでいたため、針金でつながった状態のまま慎重に取り外しました。本数が多い肋骨も、ばらばらにならないように針金で連結したままの状態で胸椎から外しました。最後に残った胸椎・腰椎・仙椎・尾椎を軸から外し、解体作業は終了となりました。

▲頭蓋骨を取り外す作業の様子

▲胸骨と肋軟骨は劣化が進み脆くなっていました

▲肋骨を胸椎から取り外す作業の様子

▲万が一骨が破損した場合にすぐに気がつくことができるように、回収した骨は黒いビニールシートの上に並べました

▲外した骨がどこの骨かわからなくならないよう、パーツごとにタグを取り付けながら解体作業を進めました

▲解体時の所見を長次郎の写真に書き込む様子

 現在骨格標本は、一号棟内の1室にまとめて置かれています。改めて骨をよく観察すると、長年の展示の影響で無数のホコリが付着しています。また、体の左側にある窓から太陽光を浴び続けていたため、体の左右で骨の劣化状態も違うようです。今後は、骨格標本のクリーニングと標本を活用した研究を進める予定です。長次郎の今後の活躍にご期待ください!

▲解体された長次郎

(学芸員 石井奈穂美)