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アジアの動物看護と日本の進路

獣医保健看護学臨床部門 臨床検査学研究分野 教授 石岡克己

 動物看護師が主催するアジア初の国際大会「第1回アジア動物看護大会(AVNC)」が、2026年3月30日・31日の2日間、マレーシア・クアラルンプールで開催されました。大会長を務めた動物看護師のChong Su Via先生は、資格制度や教育カリキュラムが十分に整備されていないマレーシアの現状を変えるため、4年前にマレーシアの動物看護団体(MAVNA)を設立しました。本大会はその事業の一環として2年前から準備が進められてきたものであり、多くの苦労を経て今回の開催に至ったものです。大会には、東南アジアを中心とする15カ国から500名近い動物看護師等が参加し、大きな盛り上がりを見せました。内容は教育講演、研究発表、パネルディスカッションなど多岐にわたり、日本からも複数の動物看護師が参加し、優れた発表を行っていました。

 本学は、アジア地域においてタイ、韓国、台湾に複数の協定校を有しており、これまでもスタディツアーの開催、臨床研修、留学生の受入れなどを行ってきました。一方で、それらの国・地域を除く東南アジア諸国における動物看護の状況については、十分な情報を持っていませんでした。今回、私はその現況を知るために本大会に参加しましたが、ご厚意によりパネルディスカッションにも登壇する機会をいただき、日本の現状や愛玩動物看護師制度について情報発信を行いました。

 日本の動物看護師制度は、アジア諸国の中では完成度が高く、一歩先を行っているといっても過言ではありません。これは、ひとえに日本の動物看護師たちが長年にわたり努力を重ねてきた成果です。マレーシアでは、前述の通りカリキュラムや資格制度は未整備です。フィリピンでは法整備が始まっているものの、教育機関はまだ2校に限られます。シンガポールは1校のみで、学士より下に位置づけられた学位があるのみです。しかし、今回の大会に参加した各国の代表者たちは、そのような状況を何とか打開しようと立ち上がった人たちでした。その姿には、10数年前、日本の動物看護師たちが国家資格化を目指して活動していた頃の熱意に通じるものを感じました。日本は島国であり、また独自性の強い文化圏でもあることから、アジア諸国の動きとの接点はともすれば薄れがちです。しかし今後、アジア諸国が結束を強め、この大会がさらに発展していけば、将来的にはアジアにおける国際的な共通資格のような枠組みが生まれる可能性もあります。そのとき、日本がアジア諸国との距離を置き続けていれば、いつの間にか蚊帳の外に置かれてしまうことにもなりかねません。先を行っていることで気を抜かず、声をかけられるのを待つのでもなく、とりわけ特に若い世代が主体となって、こちらから積極的に働きかけていくこと。そして、アジアの中で日本の動物看護師の存在感を示していくこと。それは、日本の動物看護の未来を築く上で重要な課題であると感じました。

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