食のいま

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第12号:「食品の味と香り-「口中香(か)」って何でしょう?(2)」

人間が感じる香りは、その感じ方から2つに分けられます。イラストにあるように、その一つは、鼻先で食品などのにおいのあるものをクンクンと嗅いでわかる鼻先香(オルソネーザルアロマともいいます)です。私たちが普通「香り」というときはこれを意味します。バラの花の香りを鼻先で嗅いで「いい香り!」とか、一日はいた靴下のにおいを嗅いで「くっさー!!」(笑)とかやってますよね。
もう一つは、食品を口に入れて噛んだときに、香りの成分がのどの奥から鼻に抜けて感じられる口中香です(レトロネーザルアロマともいいます。「戻り香」という人もいますが、こちらはお酒やコーヒーを飲み込んだときに食道あるいは胃から戻ってくる香りを意味することもあるようです)。鼻をつまんで食品を食べると、鼻の方に香りの成分が抜けなくなるために感じられなくなります。この香りは意外に知られていません。なぜなら、食品を口に入れたときには、舌で感じられる本当の味(前回紹介した7種類)と鼻で感じられるこの口中香を同時に感じてしまうために、両方がごちゃ混ぜになってついつい「~の味がする」と言ってしまうからです。味と香りが一緒ですから、本当は「香味」や「風味」と言うべきですが、長い習慣で「味」と言っているのです。
味と口中香を区別するのは簡単です。鼻をつまんでも感じられるものは味で、鼻をつまんだら感じないけれども鼻を開けると初めて感じられるのが口中香です。(つづく)