図書館MENU

「この一冊」 図書のご紹介

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学
image
講談社現代新書には、サッカーの本が多いです。また“岩波科学ライブラリー”には『見方が変わるサッカーサイエンス』という本もありますよ。このシリーズならでは、という一冊です。

サッカーの国際政治学

小倉純二 ( 講談社現代新書1730 2004年)
2010/06/15更新201006号
「ワールドカップに便乗してラクしようとしてますね。本書を選んだ下心が見えますよ」
「違います! 当欄では図書館にいかにいろんな本があるか、ずっと紹介してきたんですよ。今回も、スポーツ関連の本もあることを伝えたいだけです」
「専門書以外の本を宣伝しても仕方ないんじゃないですかね」
「専門書はほうっておいても借りられるんです。勉強に必要なんですから」
「個人的に読みたい本なら、買ったほうが早くないですか」
「いま、新刊書が多すぎて、ちょっとレアだと返品か絶版で店頭になくなっちゃうんです」
「ネット書店だと、欲望の赴くまま買いすぎて、請求書見て倒れたりしますしね…」
「こどもか! とにかく図書館なら、チェックした著者の他の本や、似たテーマの本を気軽に試したりできます。発行が古い本も新しい本も並んでいますからね。自分なりの、買うべき本の選び方もつかめてくるんじゃないでしょうか」
「ヒットポイントがたまったらレベルが上がりますからね」
「RPGか! で、肝心の本書ですが、著者はFIFA(国際サッカー連盟)の理事ということでも有名な方ですね。2002年W杯がなぜ土壇場で日韓共催になったかとか、フランス大会アジア最終予選の代表決定戦会場がジョホールバルになったオドロキの経緯、Jリーグ立ち上げまでの内幕などが書いてあります。思わぬところで地下鉄サリン事件や阪神・淡路大震災、NYのテロが絡んだりして面白い。サッカーを知らない人にもオススメです」
「でもなんでそれが“国際政治学”になるんですか」
「五輪もそうですけど、いまやスポーツの国際大会って、テレビ放映権やグッズ販売権などに関わる巨額のオカネや、各国の政治的な思惑など、さまざまなモノが舞台裏で動くんですよ。そこにも試合顔負けの駆け引きや運不運のドラマがあるんです」
「そういえばネットニュースのコメント欄に、そういう事を書き込む人もいますよね」
「一度きちんと読んでおけば、よりニュースが面白くなりますよ。新書はそれに最適です」
「でも、著者は選手だったことはないそうですし、ネタが限られませんか」
「例えば著者は、日韓大会のトーナメントディレクターでもありました。ですから、W杯の開催地が決まるまでの過程にしろ、開催までの道のりにしろ、言わば“舞台裏の当事者”だからこそ書けたリアリティがあると思いますね。ジャーナリストが取材して書くものとちょっと違います。今回のアフリカ大会の開催地選出投票の会場には、FIFAの理事以外入室もキビしかったそうですよ。著者はその場にいられた数少ないひとりというわけです。お宝ネタですよね」
「ページのそこここにそういった財宝が隠れているわけですね」
「だからRPGじゃないって! でも、政治や経済でもちょっと興味を持ったテーマの本を、図書館で探して読んでみるのはいいと思うんです。大学の図書館なら、借りたり返したりも授業のついででラクチンですよ」
「やっぱりちゃんと授業に出席して、大学に来たらいいことがあるんですね」
「…授業に出席しないと、悪いことが起こるというほうが正しいかもしれませんが」
「あぁ、ヒットポイントが足らないと、卒業できませんからね…」
「フツウ、単位っていいますよね…」

図書館 司書 関口裕子