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「この一冊」 図書のご紹介

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ナショナルジオグラフィックビジュアル大全 発見と探求の歴史<125周年記念出版>

ナショナルジオグラフィックビジュアル大全 発見と探求の歴史<125周年記念出版>


マーク・コリンズ・ジェンキンス(日経ナショナルジオグラフィック社 2013年)
2017/08/31更新201707号
分類番号は290。撮影機材であるカメラについても写真つきで紹介されていて、カメラ好きにはポイント高い!さすがナショジオ。『エロイカより愛をこめて』にでてきたイスタンブールの旋回舞踊も、本書で初めて写真拝見。おぉぉ。

今年の夏は旅行の予定がまるでたたず、せめて本の上で旅をするか、と、手にしてみたのがこの一冊。
ナショナルジオグラフィック誌は明治21年刊行の超・老舗雑誌で、日本でも認知度が高い。なんと初の外国語版刊行は日本版だそうだ。取り上げるテーマは実に多彩で、動物や環境、科学技術など本学にも関連があるニュースも多いため、当館では毎号購読している。
写真だけでもその価値はアリだ。その125年分の中から選りすぐった写真で構成されている本書に、見応え読み応えがないわけがない。覚悟して突入しよう。

読むほどにいろいろな連想が溢れ出てきて、感想も忙しい。
映画連想だけでも、例えば伝説の動物だと思われていたヒマラヤのユキヒョウの撮影成功記事を見れば映画『LIFE!』でショーン・ペンが演じた写真家を思い出すし、アメリア・イアハートが女性初の大西洋単独横断を成功させ、ロンドンデリーで歓迎される写真は『ナイト・ミュージアム2』でベン・スティラー演じるラリーと活躍していたシーンを見返したくなる。『マディソン郡の橋』でイーストウッドが演じたのはナショジオの写真家だった!というのもビックリ。この映画のために架空の表紙を作ったとのことで、それも掲載されていて興味深かった。こういう、メタ的視線が溢れているのも本書の特徴で、ナショジオファンにはたまりませんね。
マチュピチュやタイタニック号、大評判となった映画『皇帝ペンギン』や、ペルーのアンデス山脈で発見された「氷の少女」など、けっこう鮮烈に記憶に残っている「知っている事」はもちろん「知らなかった出来事」のページもやっぱり面白い。ホワイトハウス内部の保存状態が悪いことを嘆いたジャッキー・ケネディが、修復費用調達に公式ガイド販売をして修復費用に当てることを思いついたとき、制作を引き受けたのもナショジオだったという。ケネディ夫妻の写真が何だか懐かしかった。初めて見た写真なのに。
とにかく世界各地のさまざまな対象を捉えた写真のみならず、撮影機材や移動手段の発達、環境保護活動の発展、人類を襲ってきた災害からの復興や成し遂げてきた挑戦の歴史など、もう本当に、この世で撮れる限りのものが詰まっている。ページにみなぎる、その「みっちり感」がハンパない。危険を顧みず出かけていった写真家たち、その成果を「1万枚に1枚」というぐらい容赦なく厳選した編集者、そしてその成果のコレクターと化す定期購読者たちの熱意に、ページが焼けそうである。衣装などの参考になると保管された膨大なバックナンバーの書庫にいるウォルト・ディズニーの写真がなまなましいぞ。
本好きとしては、ここからさらなる本の旅に出発してほしい。「世界中の誰よりもゴリラを愛した」と墓石に刻まれたダイアン・フォッシーの軌跡は『霧のなかのゴリラ:マウンテンゴリラとの13年』で読めるし、ジェーン・グドールに手を伸ばす愛らしいチンパンジー“フリント”の写真を目に留めたなら『追いつめられた隣人 類人猿たちはいま』がすぐそこにある。ナショジオ関連としても『ナショナルジオグラフィックが見た日本の100年』や『RARE ナショナルジオグラフィックの絶滅危惧種写真集』がある。どれどれと思ったあなたは幸運だ。どれもちょっとほかにない本である。

本書では、日本人写真家として初めてナショジオ本誌の表紙を飾った岩合光昭氏の写真がとても印象的に取り上げられている。キモチはわかる。『ライオン家族』という、その1枚を含めた写真集もあるのでオススメだ。それにしてもすばらしい写真の乱れ打ちで、ページを最後までめくりおわったとき心に残った1枚はどれだったか、アンケートをとりたい位だ。1枚限定なんてムリな要求だと、わかってはいるけれども。

図書館 司書 関口裕子