この一冊
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日本と世界の塩の図鑑  ~日本と世界の塩245種類の効果的な使いわけ方、食材との組み合わせ方~
分類番号は669。「青い海」「海のほほえみ」「海一粒」「笹の雫」「まぁさましゅ」「南の極み」「まぐねしお」「山塩小僧」・・・ネーミングも楽しい。『エリザベート』にでてくるバート・イシュルにも名塩があって、そうか、塩の都なんだなぁ。

日本と世界の塩の図鑑  ~日本と世界の塩245種類の効果的な使いわけ方、食材との組み合わせ方~

青山志穂  (株式会社あさ出版 2016年)
2017/11/27更新201710号
映画『鍵泥棒のメソッド』、これはおもしろかった。このなかに、世界の高級品を紹介する”VIP”という雑誌が出てくるでしょう。作中では来月号の準備中で、テーマが「塩」。ふーん、塩で一号ぶん特集が組めるんだぐらいの感想だったけれど。
これほど世界に塩があるなら組めるよね!
本書で245種類ですよ。国内では約4000種類も流通しているそうで、絞り込みは激戦だったろうなぁ。紹介内容もみっちり。ちゃんとね、販売品のパッケージやお皿に出してみた塩の写真もあって、さらさらなのかしっとりなのかといった情報や、ナトリウム値や、原材料(海水とか岩塩とか)、製造工程(立釜とか平釜とか天日とか)、さらには何グラムで幾らかとか製造元連絡先とかまであって「これを手に塩の世界にずずいとどうぞ!」というウエルカムパワーに満ちていてもう、ちょっとすごい圧を感じる。塩圧です。
お味のイメージと、おすすめ食材や料理もぬかりなく書いてあるわけですよ。
しょっぱさにも、するどいのやまろやかなのやいろいろあるし、苦味やコクや旨味や後味があいまって、ただ「しょっぱい」だけではない、あとから来たりドーンと来たり、感じ方もいろいろ、それを活かした料理がそれぞれある!それを役立てて楽しんでいただきたい!と、願うあまりのこのデータの細かさでしょう。読者としてはその怒涛のような塩の山に押し上げられ、ちょっと呆然としたほどでした。
ソルトコーディネーターという資格もあるんですって。
「たくさんの塩が手に入るようになった今だからこそ」と書いてあるけど本当にそうで、この本を片手にお店めぐりしてみると、そのへんでもけっこういろいろ手に入るとわかる。そんなに高いものじゃなくてもね。
塩分を気にするひとは、この本で塩分控えめなのや、用途別に少量で良さそうなのを調べたりできそうです。旅行の前に名産の塩をチェックして、買ってきても楽しそう。だって「口溶けがよく、まるで上質なバターのよう」な塩ってどんなだろうと思いませんか。「太陽の香りともいえる酸味と、濃厚なうまみ」とか「カラメルのような香ばしさと、濃厚なうまみと熟したフルーツのようなねっとりとした甘味」とか、好奇心をそそる紹介文がにくい。そう、甘味もけっこう強調されていて「落雁のような上品な甘味が広がる」塩ってどんなんだ!と思ってしまうのは筆者が食いしん坊だからでしょうか。うっかりネットでポチらないよう気をつけないと塩棚をつくることになるな。あ、料理ゴコロもくすぐられてワクワクっとするので、年末にホームパーティを考えている方にもオススメかもしれません。ディップみたいに種類を揃えて、いろいろつけてもらうとか。で、気に入ったのをそれぞれちょこっとお土産にするとかね。

・・・こんなテンションでしばし楽しい日々を送ったのだが、なかにはいずれなくなってしまいそうで心配な塩もあった。それはそうだろう。塩に限らず、今はなんでも多様性というか、選択肢が豊富な時代で、だからこそ生き残りが難しかったり、逆にネット販売や口コミなどで復活もあり得たりする。購買者は選択するとき、また欲しいとかもっとこんなのも欲しいと思うなら、それに応じた行動を取れるし、あとあとを考えることができる。それが重要だとあらためて実感。
料理に適した塩を選べば、結果的に余計な塩分を取らずに済む、めざすべきは適塩ですと本書は謳っていて、ただのカタログじゃない、実用的な一冊をめざしていることがわかる。保存の仕方や、お料理の際のコツなども書いてあって、行き届いている。
でも、ただ読んでいてもじゅうぶん楽しい。
選択肢がたくさんあるって豊かなのだ。いや、選ぶのが大変な気もするけど。でも本書を読むと、塩に詳しくなるにつれ、自分で推測したり判断したりできるようになるだろうなぁ、となんとなくわかる。本書もきっと、そのとっかかりだ。
世界が広がるというやつですよ。楽しいじゃないですか。


図書館 司書 関口裕子