食のいま
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第36号: 伝統の器を楽しむ食卓風景 -6月-

梅雨に入りジメジメとして暑くなってくると、ガラスの器を使いたくなってきます。

そこで今月は、フランス人ガラス工芸作家ルネ・ラリック(Rene Lalique)の作品をご紹介しましょう。1920年代に製作されたこのガラス器は、Primeveres(フランス語で桜草の意)と銘のある円形小物入れです。プレス成形されたもので、オパルセントガラス※で作られています。桜草の時期にこの器を楽しむのは当然ですが、この作品が持つ独特の“透け感” ゆえ、季節を問わずいろいろな機会を作って愛でています。通常のガラス原料にリン酸塩、骨粉、酸化マンガンなどを加えて調合製作されるオパルセントガラスは、光のあたり方によって作品の印象がいろいろに変化します。写真左はカメラのフラッシュを用いて撮影したもの、すなわち反射光をあてたもので、花が幻想的な乳白青に浮かびあがってきます。そして、中央は室内自然光での様子で、全体が一様に乳白色となります。また、器の背面から光をあてて撮影すると右写真のようになり、滑らかな部分の透明感が増すと同時に、浮彫りの花が金属のような陰影をもって現れます。
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ルネ・ラリックは、1860年に母の実家のあるシャンパーニュ地方アイ村(AyまたはAi、シャンパンの産地として有名です)に生まれたパリ育ち。12歳になるとデッサンを勉強し始めますが、16歳で父親が亡くなると学業をあきらめて宝飾師に弟子入りし、工芸作家の道に進みます。宝飾デザイナーとして大成功し、さらにガラス工芸の分野で独自の世界を作り上げました。享年85歳、1945年5月5日没。

梅雨の時期には、きれいな紫色やピンク色などのマカロンをこの器にいれ、紫陽花の花の色と供に楽しみます。飲み物には、ラリック氏の生地に敬意を表してシャンパンなどはいかがでしょうか・・・。
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※ オパルセントガラス(opalescent glass)は英語読み。opalescentは”オパールのような光彩を発する””いろいろな乳白色系の色を発する”を意味する形容詞。フランス語読みではヴェール・オパレッサン(verre opalescent)となります。Verreはガラスの意味。Opalescentの綴り(つづり)は英語もフランス語も同じですが、発音は異なります。また、フランス語では名詞を修飾する形容詞は名詞の後にきますので(たとえば「青い花→花青い」のように)、語順が入れ替わります。