食のいま
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第49号:「肉料理のある食卓風景⑦-肉の加熱・保存はじまる-」

 前号でわれわれヒトの祖先が、偶発的な「腐肉(ふにく)あさり」から脱却して積極的な「集団狩り」に移行し、より多くの肉を食べるようになったことを書きました。たん白質に富む、すなわち腐敗しやすい食材である肉を不定期ながらも、着実に、ある程度の量をまとめて手に入れられるまでになったのです。この間、肉の食べ方や保存はどのようだったでしょうか? 

 地球上でおよそ100万年前からはじまった氷河期は、寒暖を繰り返しながら続きました。その間、ヒトの祖先は寒さに震えるという苦難を強いられはしましたが、氷河の氷と肉を一緒に置いておけば、より長持ちしたことを経験で学んでいったことでしょう。菌は肉中の凍結した水分を利用できず、また、低温下では菌そのものの活動が低下するため、肉はより日持ちすることになります。

 また、彼らが140万年前くらい前には、落雷による火事などで偶然に発生した火を使っていたこともわかっています。肉は加熱されると殺菌され(①)、また加熱後の肉たん白質は消化性が高まるので、生のままで摂取するよりも栄養効率が高まります(②)。さらに、100℃以上の加熱を行うと、食欲をそそる香ばしい香りが発生することから(これをアミノ・カルボニル反応と呼びます)、生肉とは違ったおいしさを味わったに違いありません(③)。そして、木の燃やしかすから立ちのぼる煙で燻(いぶ)すと、燻(くん)煙(えん)に含まれる抗酸化性および防腐力の高いフェノール類(フェノール、クレゾール、グアイアコールなど)が作用することで更に日持ちし(④)、その上、燻煙香(スモークフレーバー)も楽しめたことでしょう(⑤)。