食のいま
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第58号:「お茶の「色」にまつわるトリビア」

 飲料としての茶の色を「茶の水色(すいしょく)」といいます。これを「みずいろ」と発音すると何のことだか訳がわからなくなってしまいます。日本語の「茶色」は英語のbrownを意味します。茶色は複数の色彩が混じっていることを反映し、単一構造をとる単一物質由来の色ではありません。したがって、茶色のウーロン茶やほうじ茶は非常に複雑な構成成分になっています。さて、日本語で茶と言えば普通「緑茶」を示し、紅茶にはわざわざ「紅」をつけます。一方、欧米でteaと言えば普通「紅茶」を示し、緑茶の場合はgreen teaと言います。紅茶をblack teaという場合もありますが、中国の「黒茶」は、完成した茶葉に微生物を植え付け発酵させたものの一種で、英語ではdark teaと言います。

 中国では茶を、白茶、黄茶、緑茶、青茶、紅茶、黒茶などに分類します。このうち、緑茶と紅茶は日本語の緑茶と紅茶にほぼ対応しています。緑茶の緑色はそこに含まれるクロロフィルによりますが、それが極端に少ないものを白茶と呼んでいます。これは希少価値のある栽培種として重宝され、色が薄いのにもかかわらず独特の風味を持つことから、とても高い値段で取引されています。日本の玉露は葉を摘む前に覆いをかぶせますが、この方法では葉のクロロフィルはむしろ増加しますので、白茶にはなりません。ウーロン茶は中国の分類では青茶に属します。加工段階で茶葉が濃い青緑色を示すためこのように名づけられました。

 お茶を、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶、後発酵茶に分類することもあります。お酒の醸造や納豆の製造など、通常の「発酵」過程では、微生物(厳密に言えば微生物の酵素)の働きで食品成分が化学的変化を起こしますが、発酵茶(紅茶)の場合は、特別な意味を持っています。この場合は微生物の関与はなく、茶自身が持つ酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)の働きで、緑茶の成分であるカテキン類が2分子くっつく反応により、テアフラビン類という赤色色素が生成します。緑茶の製造過程では、葉をつみとった後すぐに、茶葉を蒸す過程があり、これによってポリフェノールオキシダーゼを含む多くの酵素が不活性化されます。この過程を「殺青(さっせい)」と呼んでいます。なお、ウーロン茶(青茶)の場合は紅茶と緑茶の中間に位置づけられ、半発酵茶と呼ばれます。一方、茶葉に微生物を植え付け発酵させた黒茶は後発酵茶になります。プーアル茶がこれに相当します。黄茶は軽度の後発酵をしたものです。

▲牧の原台地から見た大井川。手前の斜面に茶畑と霜害防止用の扇風機が見られます。