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第85号:ソーセージをおいしくする新しいアミノ酸を探して

 皆さんは、ソーセージの「おいしさ」を説明するときに、どのような言葉を思いつきますか?

 例えば、柔らかい、プリプリ感がある、パキッとした弾力がある、肉らしい味がある、塩味がする、滑らかな食感、甘い香り、スモークの香り、ジューシー、うま味がある、色(ピンク色や褐色)が良いなど、色々な表現があります。これらを大まかに分類すると、食感、風味、見た目を示す言葉になるでしょう。今回は、食感について紹介します。ソーセージの製法において、原料肉の豚肉を塩漬けする工程は重要な意味を持っています。豚肉(骨格筋)の構造を細かく見ていくと、筋原線維があります。その筋原線維には、アクチンとミオシンタンパク質が規則的に並んだアクトミオシンがあります。食塩の添加によって、ミオシンの溶出が促進されます。可溶化したミオシンは、タンパク質同士を接着させる糊のような働きを持つため、加熱によって、網目構造をもつゲル構造を形成します。この網目構造に水分が保持されることで、ソーセージに特徴的な食感(柔らかさや弾力性)が生まれます。

 生活習慣病(非感染性疾患、成人病)の発症リスクと食塩の取りすぎには関連があることから、食事における減塩が求められてきました。しかし、食塩の量を減らすと、上述の効果が弱くなるので、弾力のある良い食感とはならない課題がありました。皆さんは、その解決策をご存知でしょうか? その答えはソーセージ製品のパッケージ裏側(写真.1)にあります。

写真.1 一般的なソーセージ製品の食品表示

  食品添加物である重合リン酸塩(リン酸塩(Na))の働きのひとつは、食塩と同様に、食肉加工品の食感を良くすることです。そのため、食塩の使用量を減らすことができたのです。私たちの研究室では、重合リン酸の代替となるような他の成分を探索したところ、イノシン酸やアデニル酸などの核酸類を発見しました(※1)。イノシン酸は動物系食材などに含まれる、うま味成分として有名ですが、食肉製品の食感を良くする効果もあります。また、別の研究者は、アミノ酸のアルギニンとリジンにも同様な食感改良効果を報告しました(※2)。興味がある方は、これらの化学構造を比較してみてください。最近、私たちは、化学構造の違いに着目することで、アルギニンやリジンとは異なる別のアミノ酸も効果があることを新しく見つけましたので、その実用性をソーセージモデルで検証しているところです。

 私たち消費者は「おいしさ」を表現する際に、「味が良い」や「味が悪い」と言いますが、実際には、食べたときに舌で感じる味のみで決めているのではなく、食感や香り、外観などを総合的に捉えて、良し悪しを判断しています。これは、食品開発においても重要なポイントです。日獣大の食品科学科(※3)では、以前より、食肉や農産食品のおいしさに重要な、味、食感、香りや色に関係する幅広い専門教育を実施しており、食品開発や品質管理の現場で活躍している卒業生が多くいます。



  • ※1 Okitani et al. AMP and IMP Dissociate Actomyosin into Actin and Myosin. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, Volume 72, Issue 8, 2005-2011, 2010
    doi.org/10.1271/bbb.80128
  • ※2 Zhang et al. L-arginine and L-lysine degrade troponin-T, and L-arginine dissociates actomyosin: Their roles in improving the tenderness of chicken breast. Food Chemistry, Volume 318, 126516,2020
    doi.org/10.1016/j.foodchem.2020.126516
  • ※3 日本獣医生命科学大学 食品科学科
    https://www.nvlu.ac.jp/food/