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「この一冊」 図書のご紹介

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一流の科学者が書く英語論文 Catalyst for a Successful Scientific Career

一流の科学者が書く英語論文
Catalyst for a Successful Scientific Career


アン・M・コーナー 著:瀬野悍二 訳・編( 東京電機大学出版局 2010年)
2013/06/24更新201307号
分類番号は407。学会に出かけていった研究室のボスは罪滅ぼしにお土産を買って帰るのがふつう、とか、ホントにかゆいところまで書き込んである、退屈しない一冊。論文英語、科学英語を覚えるにもいいです。一気読みした~。

「…ずうずうしいなぁ。それ、アンタが読む本やないで。一流の、書いてあるやん」
「いや、こういうタイトルになってるけどさ、“科学者として成功するためのヒント”みたいな感じなんだよ。コツって言うか。割と初心者向けなワケ」
「そうなん? あ、ほんまや。目次見たら“論文投稿と編集長への初めての連絡”とか書いてあるわ。ええなこれ。“初めてのおつかい”みたいやで」
「いやー、そんなもんだよ。この本、図表のまとめ方とか、要旨の書き方とか、ほんと親切でさ。ほら、なんせ経験ないから、フォント選びひとつにも迷っちゃって」
「そんなんは、マニュアルみたいのがあるんと違う?」
「いろんな論文読んでると、けっこうまちまちなんだよ。そういうことについても何をどう守ればいいか、何を探せばいいか、書いてあるんだ。ありがてー」
「苦労してんねんなー。でも“添え状では編集長を名前で呼びかけること”とかって、これ雑誌に論文投稿することやろ。あんた、まだ卒論やんか」
「こういうのは参考! でもさ、面白いんだ。“Professorの略称Prof.は呼びかけには使えません”とかさ。それにAcknowledgmentsについてとか、論文が却下されたときの場合分け分析とか、ちょっと内幕モノみたいなんだよ」
「Acknowledgmentsってナニ?」
「“謝辞”だよ“謝辞”! この本、本文にも英単語混ぜてんだよ。“小見出し”って言葉のあとにカッコ書きで(subheading)とか書いてあったりさ。だんだん単語に慣れてけるようになってんの。わざアリだろ」
「“全面却下”(Outright rejection)なんて単語、覚えたないわ」
「おれだってだよ!」
「…“On the other hand”で文を始める場合は、すでに”on the one hand”で始まっている文が必ず前になければなりません“…そうやったんか! 習ったときはペアでは覚えへんかった気がするなぁ。細かいな、この本」
「著者のコーナー博士って、日本人の論文を8000編も読んできた人なんだって。だから、日本人がやっちゃいがちなミスをよく知ってんだって」
「そういう人もおるんやなー。本の初っ端も“手軽にあなたの英語を上達させる方法”やて。へぇー、単語の発音が聞けるサイトとかあるやんか! ちょっと聞いてみよっかな」
「ネットを上手に使えばって、わかっちゃいるんだけどさ。なかなか考えつかない。ノーベル賞の受賞講演とか、外国の大学の講義とか、無料で聞けたりするんだよ、実は」
「聞いたってわからへんやん」
「だから、参考! でも、その代わりさー、例えば論文の投稿って今は殆どネット経由で、Figureとか指定形式に整えたり、大変らしいんだ」
「ま、最初っからこの本とか読んで、キッチリ基礎を押さえておいたほうがええ、ってことやな! はいはい。それに何よりまず、内容が肝心やろ」
「内容についてもアドバイス多いんだ。実験で“求めていなかった結果”が出たときでも、卒論や博士論文ではちゃんと書きようがあるとか、教えてくれる」
「写真は加工しちゃダメとか、そういうことも書いてあるなぁ。でも、これは基本やろ」
「大事なことだからだろ。研究って殆どチームだし、皆が責任持ってやらないと。そう、そういう現在の状況についてもよくわかるんだ…って、ナニ笑ってんだよ」
「ここ笑える!学会でのポスター発表で“あなたのポスターを見始めた人に声をかける”ってとこ!!」
「だって、学生や院生だって賞取ることもあるんだぞ。ここにも“ポスター発表はけっして肩身の狭い二流参加者(second-class citizen)ではありません”って書いてあるだろ」
「でも“その人と知り合いになりたいと思った場合には、セッション後に会う約束をとりつける”とかって、誘うセリフまで書いとおやん! で、“場合によってはロマンスが芽生えるかもしれませんよ”って、どこまでキメ細かいんや! ナンパやんか!」
「…それも成功する科学者には必要な一大要素なんだよ、きっと」
「そんなん、科学者やなくたって一大要素や! あーウケた。うん、ええ本や」
「…なんか間違ってる気がする…」

図書館 司書 関口裕子