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「この一冊」 図書のご紹介

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学
日本の家畜・家禽

日本の家畜・家禽


秋篠宮文仁 小宮輝之 (学研 2009年)
2013/11/21更新201312号
分類番号は645。本書には、本学の富士アニマルファームで撮られた写真も沢山掲載されています! ウシやヒツジに注目だ! 美形多いぞ(←わかるのか?)

たまには図鑑的な一冊もご紹介したい。それならこれである。
筆者としては図鑑には、「読み物」と違った面白さを期待したい。いや、別に面白くなくてもいいでしょとツッコミが聞こえそうだが、心構えひとつで面白くなる本も多いのだ。
カラフルな写真満載の本書には、日本固有の在来種のみならず、外来種や改良種など「約300品種」の家畜・家禽が登場する。さて、皆さまが思い描く「家畜・家禽」とはいったいどんなものだろうか。
ウシやヒツジ、ヤギ、ブタ、ニワトリ…もちろんウマ! そう、そのとおり。第1章のウマから始まって、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、「ウサギ」、ニワトリ…と続く。品種の紹介だけでなく「絵画に描かれたウマ」や「図譜に記されたウシ」といった“歴史系”、「ロビンソン・クルーソーのヤギ」「復元オーロック(年頭の干支の本で読んだな)」などの“珍種系”、「トリュフとめすブタ」「鶏卵の大きさ比べ」などなどの“エピソード系”、そして「さくら鍋と馬刺し」に始まる“グルメ系“のコラムが随所にあって、なかなか芸も細かい。
そう、細かいのである。「ウマの毛色」の項など「鹿毛や葦毛はともかく、月毛や佐目毛って、こんな色なのか」と、じっくり見てしまった。だって、今まで時代小説で「栗毛」と思い浮かべていた色は「日本在来種以外のウマに見られる毛色」だったんですよ! ニッポンの「栗毛」ってこういう柔らかい色なのね。他にも「ロバのおすとウマのめすの間の一代雑種がラバ、ウマのおすとロバのめすの間ならケッティ」(すいませんケッティ知りませんでした)とか、「伊藤若冲の作品には今は絶滅してしまった品種も描かれていて貴重」(そんなに正確に描いてあるとは。感動)とか、「シチメンチョウは興奮すると顔や肉垂れの色が変わるので七面鳥」とか(皆さんご存知なんですか?!)…どんどん読み進めてしまった筆者であった。

ペットもまた「家畜」なのだと、再認識させられる一冊でもある。「ウサギ」だけでなく「イヌ」「ネコ」「十姉妹」「文鳥」などが載っている。「日本猫」の項には三毛猫のボブテイルの写真があり、本学のアイドル猫だったツナを思い出した(遺伝学の先生が学生を連れて見に来たこともあったなぁ)。また、江戸時代のポピュラーなペットであった「豆斑(斑模様のハツカネズミ)」は、現在のパンダマウスなのだそうだ。
これも家畜か!と驚いた項もある。たとえば「アヒル」。そういえば小学生の頃、近所に番犬代わりのアヒルがいるウチがあり、敷地に入ると羽を水平に広げた番アヒルが突進してきた、と聞いたことがある。「ガチョウ」。日本にはクリスマスにガチョウや七面鳥食べる習慣が根づいてないからなぁ。でも家禽だ、言われてみれば。「ハト」。確かに! 伝書鳩レースだってあるし、手品のハト(ギンバト)だっているもんね! この、ニワトリで始まる家禽の項は、その多彩さに脱帽だ。チャボ(矮鶏)がニワトリに分類されること、しかもこれほどバラエティ豊かなことを、これまた筆者は知りませんでした。

なんだか自分の無知っぷりをご披露しただけのような気もするが、ウマにしろウシにしろヒツジにしろ、その多様さを実感できるのは本書の醍醐味である。知らない品種がぜったいある(ハズだ)。巻頭に「野生動物の種保存については関心が高いが、絶滅危惧家畜に光が当たることは未だ少ない」という嘆きの言葉があるが、それも、これほど多様な種とともに我々が生きてきたことを、実感する機会が少ないからではないだろうか。日本全国津々浦々、という表現をしみじみ感じながら、その個性的な姿を楽しもう。
なお、今後期待される家畜家禽は「ダチョウ」と「ワニ」だそうだ。ダチョウについては当欄でも『ダチョウ力』でご紹介したが、ワニか! ワニ肉はヘルシーで、血液中の抗体が持つ免疫力も注目を集めているという。熱川バナナ・ワニ園で見た、折り重なったワニ(ハリボテかと思ったら動いたので驚いた)が次のスターなのだ。そうかー、もう「ワナナ・バニ園」と言い間違えることはなさそうである(←仲間内で流行った言いまつがい)。

図書館 司書 関口裕子