カラスはお好きですか?
著者はカラス愛溢れる動物行動学者。卒業研究でカラスを取り上げて以来、研究対象はカラス一筋!という筋金入りのカラスマニア。そんな著者が簡単な言葉とユーモラスな語りでカラスへの愛情いっぱいに、人間に忌み嫌われがちな「カラスの言い分」を記したのが本書です。
本書はまず、カラスとはなんぞやという視点からはじまります。一口に〈カラス〉というけれど、実はカラスにも色々いるのです。主なカラスは「ボソ」さんと「ブト」さん。そこから綿密なフィールドワークを通して見えてきた、思わずにやけてしまうくらい愛くるしいカラスのエピソードや、臆病で器用なカラスの実態がストーリー仕立てで語られます。都会にカラスが多い理由や、グルメなカラスのお食事事情など(大好物はまさかのマヨネーズ!)、読み進めていくうちにいつのまにか人とカラスの関係についても考えさせられる一冊です。終盤にはカラスについてのQ&Aやおまけコーナーのカラス度診断もあり、親しみやすさ抜群の図書となっています。
特に面白いのはQ&Aコーナー。とりあえずQ&Aコーナーだけでいいので読んでいただきたいです。
カラスはなぜ黒いのか?
あんなに黒くて暑くないのか?
カラスがうるさいんだけど?
カラスってずうずうしくてムカつくんだけど?
といった質問や、
カラスって食べられるの?
カラスとネコがガチバトルしたらどっちが勝つの?
などなど、えっそんな事聞いちゃう?答えちゃう?なQ&Aが満載です。よくある質問、哲学的な質問、マニアックな質問とグレードが上がっていくのもナイス。よくこんな質問が思い浮かぶなぁと感心すると同時に、それに真面目に答えてくれるのも素敵です。そしてどのQ&Aにもかわいい挿絵がついています。かわいいです。何度でも言います絵がとてもかわいい。
著者のカラスへの愛情がたっぷり込められた取っ付きやすい文章とかわいいイラストの相乗効果で、読後にはうっかりカラスが好きになってしまいます。そしてすぐにでもカラスを観察しに出かけ、アイツは「ブト」だな!「ボソ」だな!と言いたくなること間違いナシです。
もちろんカラスの〈教科書〉ですから、一冊読み終わる頃にはカラスの基本的な知識が手に入ります。また、本書を通して、カラスを研究する研究者のフィールドワークをはじめとした研究方法や地道かつハードな研究の実態も伺うことができますし、著者によるあとがきでは普段博物館に勤務する著者の日常にも触れられているので博物館でのお仕事に興味がある人の参考にもなると思います。
著書の松原氏の祖父は数学者の岡潔氏だそうです。岡潔氏については岩波新書「岡潔:数学の詩人」(高瀬正仁著)が当館所蔵となっておりますのでこちらもぜひ。
図書館 司書 関口裕子