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「この一冊」 図書のご紹介

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学
そして恐竜は鳥になった 最新研究で迫る進化の謎

そして恐竜は鳥になった 最新研究で迫る進化の謎


土屋健(執筆)小林快次(監修)(株式会社誠文堂新光社 2018年)
2021/8/12更新 202102号
分類番号は457.8
前回も鳥本で、今回もある意味、鳥本ですね。夏休み企画です。

出遅れた。興味なかった。担当外だった。
などという事柄について、知らないで生きていることは沢山ある。そういった分野に突然、キャッチアップしなければならないとき、ヒトはどうするものだろう。
やはり、ググるのが正解か。英語でもGoogleが動詞化されているしなぁ。

ふと「恐竜って、いまどのあたりじゃろ」と思った筆者の場合、ググったところ混乱がいや増した。さすがに当館で「鳥本」を山ほど読んできているので「恐竜起源説」や「小惑星衝突絶滅説」などは知っていたものの、ちょっとその先を検索してみると、出るわ出るわ、ニッチな情報が満載すぎて、とてもではないが一望できない。
そこで図書館員らしく、本を読むことにした。
当館は研究・学習を目的とする大学図書館であり、本学に恐竜学専攻の教室はないので「恐竜本を完備」とは言えない。しかし自信をもっておススメする。本書は筆者のような「恐竜の新常識についてはニュースでちょこっと知った程度の、ごく一般的読者」さまには非常にわかりやすく、かつヴィヴィッドな一冊である(イラストがすばらしいんだ)。

「モフモフした恐竜がいた!」という驚愕のニュースが中国からどんどんやってきたのは1990年代後半である。映画『ジュラシック・パーク』の公開が1993年で、続編も続き、なんとなく恐竜ブームを感じてはいた。映画の中でグラント博士はすでに「鳥は恐竜の祖先なんだ」と言っており「あぁ、これから研究が発展していくんだな」と確かに思った。
しかし、怒涛の新発見乱れ撃ちまでは予想しておらず、いつの間にかすっかり「出遅れて」しまったのだ。恐竜界はそんな筆者を見捨てず、本書がちゃんと待っててくれた。
「鳥の恐竜起源説」から丁寧に語る小林快次先生の「はじめに」が、とてもいい。つづく第1章からの本文にしっくりと流れていく。
絶滅した古代の生き物(=現代とはかけ離れた存在)として扱われていた恐竜が、いまも繁栄し続けている鳥類(の祖先)として、より身近な存在となっていく過程を「恐竜の食べ物研究」「子育て研究」「翼の研究」と順番に解説され、「羽毛があった」というだけの知見だった「恐竜=鳥類」論がほろほろと補強されていき、読んでいると心地いい。
なるほどこれはまさしく鳥類である、と実感できたところで第4章「鳥の誕生」である。積みあがった知見から鳥類の誕生をひもとくこの章は、始祖鳥というトリッキーな存在の謎解きも含めて圧巻だ。

そもそも「鳥」とはどういった存在なのか、大量絶滅をなぜ鳥類は生き延びたのか。
筆者の知っている恐竜研究とは「地質学」だった。が、近年のそれはどんどん生物学的アプローチになってきている。「トリケラトプス(鳥盤類)と鳥類(イエスズメ:竜盤類の子孫)の、最も近い共通祖先から生まれた子孫のすべて」というのが現在の恐竜の定義であり、「恐竜とは鳥類以外の恐竜を指す」とあらかじめ注釈するのが昨今の恐竜本の常道というからには、ムリもない。
恐竜は絶滅していない。鳥類として生き延びたことが判明し、過去の繁栄を研究しやすくなったのである。モフモフしたカラフルな恐竜にドキドキし、かつての爬虫類型イメージ図が掲載されたかつての恐竜本とのギャップにしんみりしたりするが、それもいい。
図書館には、変わりゆく恐竜の姿が残されている。それは発展の歴史であり、その時々の知見の集大成であり、それらがまた次の発見をもたらしてきた。
それは、これからも続くのである。本書の読者からも未来の担い手が登場するだろう。




図書館 司書 関口裕子