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「この一冊」 図書のご紹介

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学
ウサギの看取りガイド ウサギのきもちと病気、その対処法がマルわかり

ウサギの看取りガイド ウサギのきもちと病気、その対処法がマルわかり

田向健一 監修(2017年 株式会社エクスナレッジ)
2022/03/03更新 202203号
分類番号は645.7
【家族のいない犬と猫をしあわせにするプロジェクト(HappyProject - ハッピープロジェクト)】は、引退動物の実態調査も行います。人も動物も安心して年をとっていける世界、One Healthを目指して。

『珍獣の医学』でご紹介した田向先生は、本書の「おわりに」にこう書いている。
「私が獣医師になった20年ほど前、ウサギの寿命は6~7年くらいが普通でした。しかし、最近では10歳以上の子もめずらしくありません」
 本当に、ウサギを友とする人は増えた。以下のように、ユニークな出版も続いている。
  2013年 兎とかたちの日本文化(東京大学出版会)
  2017年 ウサギ学:隠れることと逃げることの生物学(東京大学出版会)
  2019年 写真でつづるアマミノクロウサギの暮らしぶり(南方新社)
 出版にはムーブがある。誠文堂新光社の『うちの鳥の老いじたく』と本書『ウサギの看取りガイド』という、犬猫以外のシニアペット本は、奇しくも同じ2017年に登場した。
 前述のように10歳超えも多いとなると、小学生で出会ったウサギと成人式まで一緒にいたり、ウサギと一緒に飼い主自身もアラフィフからシニア期を迎えるなども全然ありだ。
 なんとかけがえのない、大切な時間だろう。

 そんなうさ飼いの皆さまに断言したいのは、本書は「看取りまでを日々幸せにウサギと暮らすガイド」だということである。
 30ページ超を占める第2章「自宅で行う看取りケア」は、老ウサギに限らない「日々のうさケア知識」が満載だ。実際、ウサギと暮らすにあたって最初に本書を手にとったとしても、問題ないかもしれないぐらいである。ニンゲンと同じで老化というものは、決してクッキリした境界があるわけではなく、日々暮らすうちに自然にたどる道なのだ。
 そして第3章の「受診のサイン」は必読である。「お腹が張っている」「体臭がいつもと違う」「耳をひたすらティモテしている」(ティモテ…何もかもがみな懐かしい)といった、ともすれば見過ごしそうなことが意味するかもしれないリスクに気づかせてくれる。
 そしてシニア期に多い病気と対処法、ターミナル期のケアについてなど、150ページちょっとで読み終わる。どのページもやさしいイラストと文で、読むストレスも少なそうである。

 ヒトのための健康本は、ヒトが読む。しかしペットのための健康本は、ペットのためにヒトが読むのである。本書は、大切なウサギのために時に不安を抱える飼い主さんと、彼らのウサギに向けて書かれているということが、すみずみから伝わってくる一冊だ。うさ飼いさんなら知っているだろう言い回しもちょこちょこあり、前述の”ウサギがティモテする”という言い回しには座布団をあげまくってしまった。そんなところもニクい。
 そして全体を通してやわらかめな印象であるが、まだ少ないウサギ専門医の探し方についてスッパリ「かかりつけ医に聞いてみるという手もある」と教えてくれたり(ネットで悩みまくる飼い主さんも多いはずだ)、断脚というハードな治療を伴う骨折についてきちんと説明していたりと、記述は逃げていない。安楽死についても同様だ。そして断言してくれる。
「ウサギのことを考えぬいて選んだ治療やケア、その決断に誤りはないのです」

 ウサギという、まだ犬猫ほどはポピュラーでない、しかしとてつもなく可愛い生き物とともに暮らし、やがてシニア期を迎える飼い主さんに心からエールを送りたい。あなたは1人じゃない。ウサギもサインを出してくれている。そして、本書のような強い味方もある。

 ウサギを愛する人が、ウサギとともにあらんことを。

図書館 司書 関口裕子
家族のいない犬と猫をしあわせにするプロジェクト
※このクラウドファンディングは2022年3月16日に終了しました。
ご協力ありがとうございました。