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サブプライム問題の正しい考え方

倉橋透・小林正宏 (中公新書1941 2008年)
2009/06/10更新 004号
「サブプライムローン問題」とは「アメリカ」の「低所得者層向け住宅ローン」が「証券化されて世界的にばら撒かれ」たが「延滞が続発し証券価格が暴落」、それが危機になって云々、と、通りいっぺんに知っている方。
そういう方がこの本を読むとかなり知識を深められるだろう。そもそもサブプライムローンとは何か、どうして次々に無謀なローン契約が成立したか、なぜ証券化されたか、そんな証券をなぜ世界中が買ったのか、そしてそこまで世界が恐慌状態になった理由は何なのか、実はボンヤリと疑問に思う点も多かった筈だ。
この問題は、悪徳商法や投機の暴走という観点でのみ語られることが多いが、アメリカと日本では、銀行や預金、投資の一般的な位置づけからして違う。まずは、証券化を促した背景や、社会の仕組みのなかでの資金の動きを押さえよう。

気軽に読み飛ばせる本ではないが、淡々とした簡潔な文章で、敷居は高くない。ところどころ膝を打つような絶妙のたとえ話があって、ウィットが感じられる。きちんとスーツを着た先生が、穏やかでハッキリした口調でわかりやすく講義してくれるような本である。

なお、出版時期の関係でそのあとに続くリーマン・ショックについては語られていない。それについては、また別の図書を紹介したい。