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シュウカツの友

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学
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牛乳の未来

野原由香利(講談社 2004年)
2009/07/08更新 011号
なんというか、思ったよりも「読ませてくれた」本。
最初は、聞き書きで始まる。聞き書きというのは、インタビューして、そのひとの言葉を上手にそのまま再現することで、まるでその場で聞いているみたいな臨場感が味わえる書き方。そしてインタビューのお相手は、あの『牛が拓く牧場』(当館も所蔵 分類641.7 S-10)の斎藤晶さん。そう、「山地酪農」の超・有名人である。漫画『暁星記』の菅原雅雪が初期に書いた『牛のおっぱい』は、この斎藤牧場がモデルだそうだ。
斎藤さんのお国言葉が心地よくて、なんだか夢物語のようにつらつら読み、なるほど~、と、読み終わるかと思いきや。
第二章はその斎藤牧場を冷静に批判する意見が展開する。え、と座り直した。
そして第三章からは斎藤牧場に続く存在の個性的な牧場を幾つか紹介している。吉川友二さんの経営する「ありがとう牧場」や、新村浩隆さんの「十勝しんむら牧場」、三友盛行さんの「三友牧場」など(どの牧場もホームページあり。十勝しんむら牧場はショップもすごい! 三友牧場はチーズ工房、ありがとう牧場はビーフの販売を掲載。ブログがあったりして、楽しい)。
そして、彼らから見た斎藤牧場へと、話は還って行く。

酪農の専門書ではない。別に山地酪農をお薦めしたいワケでもない。が、本書を読むと、酪農や「消費者と生産者の関係」について深く考えさせられる。安全性や本当のおいしさと、安価なコストや手に入りやすさは、はたして、両立するのだろうか?
牧場、そして食品関係に就職を希望する方には、読んでいただきたい一冊。