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戦う動物園

小菅正夫・岩野俊郎 著・島泰三 編 (中公新書 1855年)
2009/6/10更新 004号
旭山動物園は超有名だが、到津をいとうづ、と読める人は多くないかもしれない。
ふたつの動物園は、かつて、ともに閉園の危機にあった。
「行動展示」で一躍世界的に有名になった旭山。頭上に寝そべるヒョウや円柱の中を泳ぐアザラシにばかり目がいってしまい、これをつくったから成功したのだ、と思いたくなる。が、スタッフの意気込みと細やかなサポートこそが、旭山を支えているのだと、園長(注:小菅氏は現在、名誉園長)の言葉で語られている。
そして、市民からの寄付とボランティアを中心に甦った「到津の森」。多くの人々が動物園のために財布を開けた。読むほどに、ちょっと信じられないほどの熱意がこの園を支えているのがわかる。その奇跡とともに、ゆかりある到津の歴史や園の佇まいが語られるさまは圧巻である。行こう、行ってみたいと思う人も多い筈だ。
そして、登場する動物園関係者がそれぞれ、動物園とは、意味があるものなのかと、ときに深く思い悩む姿に胸を打たれた。
ふたつの動物園の復活劇は、それぞれ異なる過程を辿った。友であるふたりの園長もまったく違うタイプの人間である。ひとはつよくあるべきかもしれないが、それは違う姿をとっていいのだ。そして、それをお互いに尊敬し合えるというのは、大マジメな話、すばらしいことではないだろうか。