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森林と人間
-ある都市近郊林の物語-

石城謙吉 (岩波新書1166 2008年)
2009/8/6更新 017号
ちょっと面白い経歴の方なのだ、この本の著者は。
北大農学部応用動物学教室で鳥の社会行動を研究、卒業して高校教員になり、3年後、院生として大学にカムバック、イワナの研究で学位を取る。
が、学園紛争のさなかで職はなく、恩師に引っ張られて演習林に赴任、鳥の調査や野ネズミ集め、学会発表などして暮らすうちに、どうにも「演習林」という場から離れられなくなり…。苫小牧の演習林に「林長」としてデビューしてしまうのである。
そして「地元に根付いた林とは」「森林の役割とは」といった大きな命題に向かって突っ走っていってしまうのだ。
今度の「林長」はいったいなんなんだ?!
そう思われているだろうな、と、著者自身、ちゃんと認識しながら、しかしヨーロッパに視察にも行き、試行錯誤しながらもどんどん林を変えていく。木々を整えながら、川の流れに淵をつくり、橋をかけ、池を掘り…そのうちに魚が、鳥が集まるようになる。
その、アニメになりそうなほど、豊かに変わる森の再生はすばらしい。やがて多くの市民がそこを楽しむようになる。研究者も集まる。「都市林という場」には、これほどの包容力があるのか。ちょっとしたドラマ並みの面白さなのだ。

現在、森林の効用は着実に見直されている。温室効果ガス削減、市民生活の潤い、林業の復活。健康な自然体系を維持することの重要性も、各方面から語られるようになった。公務員になる人は、いずれこのような活動の担当者になるかもしれない(企業でもこういった部署が新設される可能性がある)。また、有意義で、将来性も見込めるこの分野を、一生の仕事と思う方がいるかもしれない。
そう思い、『森林インストラクター入門』とともに、並べてみました。