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調べる技術・書く技術

野村進 (講談社現代新書1940 2008年)
2009/8/12更新 019号
ジャーナリストが、手の内をさらしてくれることは、あまりない。
だから、珍しい一冊である。『千年、働いてきました』『コリアン世界の旅』などの名著で知られる野村氏の文章は、実に淡々としている。が、読むうちに圧倒されるだろう。
テーマを切り、取材し倒し、言葉を編み上げて「ノンフィクション」をものにする。並大抵の苦労でないことはすぐ想像できる。下調べの方法や、取材のアポの取り方、メモや録音の作法、原稿への取り組み方…野村氏はそれを、ひとつずつ、丁寧に記している。
ビートたけし氏や養老孟司氏、細川護熙氏といった著名人へのインタビューが次々登場するのもさすがだが、やはりノンフィクション・ライターの凄みが感じられるのは、その文章であった。
「かくしてインタビューは終了した。あなたは取材ノートを閉じ、録音機器の停止ボタンを押す」…そこで、いったん文章を切る。そして、呟くように次の文が続くのだ。
「ところが、本当の取材はここから始まるのだ」

採用試験に、小論文を書かせる、という企業がある。自由にテーマを選ばせてエッセイ風に書かせるところもあれば、決められたテーマを元に自説を展開させる本式の論文を求めるところもあるだろう。
採用担当者は、言わば読者である。ユニークで、読ませる一文を書いて好印象を与えるにはどうするか。小論文対策は、自分で「練習」を重ねるしかないが、いったい何を書けばいいのか、途方に暮れてしまっては前に進めない。
そういう方に、本書は道を示してくれるかもしれない。ありふれた経験や、自分に関係ないようなボンヤリとしたテーマに、どう切り込んでいけばいいか。
実はあなたも、あなただけの「切り口」を沢山、持っているハズなのである。