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美味しさの力
―生命あふれる奇跡の食材―

永田照喜治 (PHP研究所 1998年)
2009/8/27更新 021号
「ほぼ日刊イトイ新聞」の愛読者の方には、おなじみの名前だと思う。
永田照喜治氏の、永田農法。
「水なし肥料なし」「スパルタ農法」などと呼ばれている。何しろ美味しいらしい。巻頭の写真にあるトマトなんて、ウブ毛がきらきらしていて、見るからに、強烈に、美味しそうだ。
本によって、語調というのは違うものだが、本書の言葉は、かなりしっかりと響く。ページの上を滑っていく言葉ではなく、ページに立ち上がって読者に向かってくるような言葉だ。

「本当の有機的農業とは、何だろう」
肥料の、質と量が問題なのだ。永田氏は訴える。濃厚飼料を食べて太らされた家畜からの「有機」肥料…それも、大量の、まだ充分に熟成されていない肥料。
それらを使う危険性を読むと恐ろしくなる。経験と理論に裏打ちされた永田氏の言葉は、少なくとも読者を「もう一度考えてみよう」と誘う力を持っている。
(本学の富士アニマルファームの堆肥舎!その重要性が、初めて実感できた)

有機栽培、というだけで、いいものと安直に考えない。
そして、野菜本来の旬。本来の産地。本質をとことん突き詰めて考え、「いい」と思った結論をどんどん実践する。永田氏は、今でも精力的に活動を続けていると言う。そして彼の農法と精神を受け継いだ後継者たちは、世界中に育っている。そんな意味で、本書は農法の本というだけではなく、生き方の本とも言えるのではないだろうか。