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はたらく人びと

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学
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ダチョウ力
―愛する鳥を「救世主」に変えた博士の愉快な研究生活―

塚本康浩 (朝日新聞出版 2009年)
2009/10/2更新 025号
『この一冊』 でもご紹介した、いま、話題のダチョウ本。
ダチョウの卵からつくった抗体をマスクに塗って、「ダチョウ抗体マスク」。
空気清浄フィルターに活用して「ウィルス対策用空気清浄抗体フィルター」。
スプレーにして、外出時などに外側から噴射できる「抗体スプレー」。
錠剤にして、「トイレタンク用抗体錠剤」。
糞を活用した肥料、抗体を混ぜたダチョウ抗体納豆、卵の殻を加工したアロマスタンド、犬猫のパルボウィルス用抗体、猫のヘルペスウィルスのワクチン、アトピーにも効果があるダチョウアロマオイル…本当にもう、ダチョウ力は奥が深い。
しかしこれら、さまざまな活動はすべて「もやし工場の産廃処理目的の、ダチョウ牧場」から始まったというから面白いのだ。著者はそこでダチョウの奇妙奇天烈な生態に呆れているうちに、ダチョウの可能性に惹き込まれてしまった。
そして「採算がとれないから、もう牧場をたたもうかと思う」という牧場主の言葉に突き動かされるように、ダチョウ抗体の実現化に邁進する。ダチョウ抗体はすんなり生まれたものではなかった。肝心のダチョウもまた、なまやさしい相手ではなかった。なにせ世界で最大種、人間を軽く蹴倒し踏みつけていく凶暴な鳥である。
手塚治虫が描く女の子のように、長いまつげのパッチリ目のダチョウは、体重百キロ、体長2.5メートル。脳みそツルツル。予測不可能な、この巨大鳥を相手に奮闘する「はたらく人々」のドラマは、一読の価値がある。
あなたの知らない、はたらく人々がいることは、間違いない。