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最強の競馬論

森秀行 (講談社現代新書1657 2003年)
2010/03/10更新 028号
いったい競馬というものは、どういった仕組みになっているのだろうか。
馬券の買い方や配当の計算方法、レースの種類、血統の違い、それぞれに薀蓄が山ほどあるらしいのが競馬だが、そもそもサラブレッドがどういう風に生まれ、どうやって馬主が決まり、どんな風に日々を暮らしてどれくらい稼ぎ、その賞金がどういった分配をされ、騎手はどう決まるのか、といったことが具体的に(私には)想像できない。
でも調教師という仕事には興味がある、という(私のような)方にオススメの一冊である。

サラブレッドの血統や個性の「見方」、種牡馬の存在、騎手の役割、調教内容、番組(出走レース選択)の組み方、そして海外遠征に至るまで、内容は細かい。また、それだけ「厩舎」を経営する調教師の仕事はデリケートである、ということだろう。
一頭五千万円とか一億とかするサラブレッドも、つまりは生き物なわけで、それを預かって調教し、レース時にベストコンディションに持ってきて走らす、というのがどれほど難しいか。本書に登場するさまざまな「金額」も桁違いだが(生涯獲得賞金十八億、とか)、
それにしても凄いビジネスであるということが、読むほどにわかってくる。
力作である。
生き物で賭け事をする世界ではあるのだが、どこか夢を感じさせるのは、まさにそれが生き物だからであり、さまざまな職人技がかかわってくるからだろう。計算し尽された血統に期待をかけるくせに、人は番狂わせをも待っていたりする。
それらを影で支えているのが、著者のような人々である。著者の森秀行氏はアグネスワールド(アベイ・ド・ロンシャン賞などを制覇)、エアシャカール(2000年の皐月賞・菊花賞クラシック二冠馬)などの調教師として知られている。マスコミ嫌いで有名だが、本書は率直な言葉で実に淡々と書かれ、シロートでも受け入れてくれる。