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はたらく人びと

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学
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パンダの死体はよみがえる

遠藤秀紀(ちくま新書520 2005年)
2010/05/11更新 038号
5トンを超えるゾウの遺体。パンダのフェイフェイや忠犬ハチ公のような「高名な」遺体。本書には沢山の遺体が登場する。著者が向き合うのは動物の遺体なのである。
大昔に命を終えた遺体もあれば、たった今、息をひきとった遺体もある。
なまなましい作業である。著者はそれをぐいぐいと描写していく。
「偽の親指」と呼ばれる「撓側種子骨」が動いて竹などを掴める、と思われていたパンダ。フェイフェイの遺体が運び込まれ、その手を握ってみて著者が愕然とする。撓側種子骨は動かないのだ。ではどうやって、モノを掴んでいたのだろう?
この、もう動かないフェイフェイの体が、まるで語りかけるかのように著者に真実を見せていくくだりは圧巻である。こういう研究が世の中にはあるのか。

「遺体が語る真実」の価値は測り知れない。なのに見過ごされがちだという現在の状況を訴える著者の声もまた切実で、本書を「はたらく人々」に加えたいと思ったのはその声を伝えたい、と思ったからだ。本書にはさまざまな「はたらく人」の姿が見え隠れする。仕事というのは本当にさまざまなかたちがあり、知らないだけで天職にめぐりあえない人もまた多いような気がするのだ。
まずは、知るためにいろいろな本に出会ってほしい。本もまたチャンスなのである。