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牛乳を搾る暮らしと飲む暮らし

河合知子(筑摩書房 2009年)
2010/10/06更新 047号
いいタイトルである。「搾る暮らし」をする酪農側と、「飲む暮らし」の消費者側の、どちらにも言及した一冊だから。
そのせいか、微妙にピントがボケたというか、印象が曖昧な気がしてしまう一面もあるが、読み進める分には何の問題もない。さらりと読める貴重な酪農エッセイである。酪農業における女性の生き方の問題や、牛乳の消費拡大について、丁寧に考察している。
介護の問題にしろ、過酷な労働の問題にしろ、これまではとにかく当事者が目をつぶって耐える、しかなかった問題が、あらためてクローズアップされている。少しずつであろうと、やはり変わるべきところは変わっていくしかないのではないか。別のところに問題は出てくるかもしれないが、それはまた別の話。

チーズやヨーグルトや生キャラメルやジェラートといった、これまでは「添え物」でしかなかった商品が、酪農家のあらたな希望になりつつあることについても、レポートがある。消費者として、これは大いに納得がいく。おいしく食べたいし、楽しく食べたいし、安全に食べたい。そのための消費者の姿勢というのも、これからは問われる時代になっていくだろう。そのあたりの考察も垣間見え、読みやすいが味のある一冊である。