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三元豚に賭けた男 新田嘉一[平田牧場の43年]

石川好/佐高信 (七つ森書館 2010年)
2011/11/30更新 053号
平田牧場についてご存知でなくても、本書をお読みになると「あ、知ってる」と思われる方が多いのではないだろうか。
例えば「銀座平田牧場」や「平田牧場 エキュート東京店」といった、豚肉料理のお店。
ウォッカがその名を轟かせた第74回日本ダービーで、穴人気になっていた「ヒラボクロイヤル」など、サラブレッド達。
竹久夢二美術館もあり、国の登録文化財建造物でもある、酒田市にある茶屋「相馬樓」。
中国黒龍江省ハルビンから、黒竜江、アムール川、間宮海峡を通って山形県酒田港に至るという、壮大な「東京水上シルクロード貿易」。
そして、「三玄豚」や「金華豚」といった、おいしい豚肉。
「平田牧場」「ヒラボク」は、紛れもなく一大ブランドであり、人気企業なのであるが、それだけではないのだ。
農家の息子が畜産に挑んだ成功譚、と言うにはあまりにもスケールが大きい。こういう人物がいるのだ。
こういう生き方もあるのである。
藤沢周平や土門拳を生んだ庄内地方の空気が、行間からたちのぼるようであるが(佐高信氏も酒田市出身)、新田嘉一氏が1969年に視察したというヨーロッパ、そして水上シルクロード計画で深く関わるロシア、中国など、世界からの風も駆け抜けている。おいしく、健気な、体にも心にもいい一冊。