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動物園ではたらく

動物園ではたらく

小宮輝之 著(イースト新書Q 2017年)
2018/06/06更新 083号
上野動物園の園長だった方の本。
多摩動物公園、井の頭自然文化園と、複数の動物園をそれぞれ経験されているのも貴重。そう、都立だから転勤があるのだ。飼育係という公務員、について書かれているという点でもユニークな一冊かもしれない。
まぁとにかく、新人の下っ端飼育員時代のエピソードから、日本一有名な動物園の園長としてパンダを迎えるあれこれまで「動物園のお仕事」としてはてんこ盛りである。
最初の多摩動物公園は広さが上野の4倍。「動いてる動物を見せる」動物園だから、無柵方式の部分もあって、その工夫や脱走騒ぎの話もあるし、クマ用ビスケットの開発など動物園発展期ならではの話もある。ひとくちに「ごはんの開発」といっても、これがそののち「トキ専用ペレットの開発」などに経験が生かされていくわけで、なるほど現代の動物園にはこうやってノウハウが蓄積されていったのだなぁ、としみじみした。ワシントン条約以前は「飼いきれなくなった動物が寄贈される」なんてこともあって、なかなか読めない体験談だらけだ。
そして現代の動物園の貴重な役割「種の保存」に関わるエピソードも数多くある。

「動物園のプロ」として各業務を冷静に振り返った内容なのだが「私は喜怒哀楽が顔にでやすく、お役人としての園長には向いていないように常々感じている」というだけあって、サラッと書いてあるけどこれ現場ではけっこうモメただろうなー、と思う箇所もチラホラ。
いろんな意味で興味深かった。
「動物園で一生働きたい」という方はかなり参考になるのでは。