■“機関リポジトリ”とは何ですか?
日本獣医生命科学大学学術リポジトリはこちら
“リポジトリ(Repository):収納・保存する場所/知識などの宝庫/博物館・美術館”
「機関リポジトリ」の「機関」は、大学や研究機関のことを指します。
「機関リポジトリ」は、大学や研究機関の収納・保存庫という意味になりますが、何を収納するかというと「その機関の知的成果物のデジタルデータ」です。
もっとも一般的に収納されているのは「学位論文(博士論文)」です。「学位の授与」に関しては「学位規則」という法令があり、その中で「学位論文は全文公開すること」が定められていましたが、平成25年の一部改正で新たに「インターネット利用による」公開をすることが義務付けられました。
学位規則8条・9条はこちら
この改正により、大学による「機関リポジトリ」の設置と拡充が一般的になりました。
学位論文以外に「学術論文(学術雑誌に掲載された論文)」「講義資料」「学内刊行物」など、さまざまな成果物の公開を始めている大学もあります。
■そもそも公開されている「学術論文」をリポジトリで公開するメリットは?
【著者(研究者)・大学へのメリット】
論文を掲載したり購読したりするために、実は多額の費用がかかっています。
学術論文が掲載される「学術雑誌」の購読料の高騰が問題になっています。
インターネット上で論文をダウンロードすると高額な価格が提示されます。大学など研究機関では、数千から数万タイトルの学術雑誌の購読料を年間契約しています。
この価格は大学によっては年間で億単位の契約料となり、しかも年々高騰するので契約を削減せざるを得ない機関が増えてきました。
研究者が論文を読みたくても読めないという事態が発生しているのです。
そのため「学術論文のオープンアクセス(OA)化」への流れが加速しています。
「OA」にはいくつかのタイプがあり、代表的なものは以下のふたつです。
・ゴールドOA:論文の掲載に当たって著者が「掲載料*」を支払いフリーアクセス化する
*有力雑誌だと1論文あたり百万円を超える高額となることが多い
・グリーンOA:機関リポジトリなどに論文をあらためて収納し、フリー公開する
高騰する購読料を払わなくて済むオープンアクセス化(ゴールドOA)を進めると、今度は高額な掲載料を支払わなければならないという状況となってしまっているのが現在です。
出版社に掲載料を支払う代りに、機関リポジトリで公開する(グリーンOA)はその打開策でもあるといえます。
【読者(一般ユーザー】へのメリット】
機関リポジトリの普及によって、学術論文へのアクセスが容易になりました。
国内の機関リポジトリの収納データを集めるデータベースがあります。
IRDB(学術機関リポジトリDB)
国立情報学研究所(Nii)が運営しています。
「機関リポジトリ」設置に際し、設置機関はIRDBに登録します。
また、機関リポジトリに収納するコンテンツには、既定のプロトコルに則ったメタデータを付与します。
IRDBは、上記メタデータが付与されたコンテンツを収集・蓄積し、国立国会図書館やCiNii(Nii学術情報ナビゲータ)などに提供します。また「Google」などの一般サーチエンジンもサイトマップを登録すればデータを収集します。
何かを調べると、自然に学術論文にアクセスする機会が増えることになり、インターネットの一般利用者にも情報が届きやすくなっています。
■商業誌でもある学術雑誌に載った論文をリポジトリに再掲載して問題はないのですか?
学術雑誌には、雑誌ごとにOAに関する規約があります。
掲載から一定期間公開を禁止する「情報公開解禁日時(エンバーゴ)」の設定や、掲載するバージョン(著者最終稿や査読後決定稿/雑誌掲載時とは異なる)の限定などがあります。
上記を確認し、問題がないことを確認して掲載する流れとなっています。
■デメリットはありますか?
以下のような作業がリポジトリ運営機関に発生します。
・規程のメタデータを付与するなど、各デジタルデータの整備
・成果物の著作権処理や情報公開解禁日時等の確認などの手続き
・上記のような作業の分担や、収納物の種類の検討など、リポジトリの運営方針の検討
海外では公的助成を受けた研究はOA化することを義務化する動きが高まっています。日本でもオープンアクセス化が加速しています。
一方で、著作権等の手続きは正しく行われなければなりません。
■参考:他大学のリポジトリをご紹介します
■IRDBには本文にリンクできるコンテンツが多数登録されています。
「オープンアクセス」や「機関リポジトリ」といったワードでも検索してみてください。