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【新着論文】3D心エコーは、右心室の形態と機能をより正確に評価できる

論 文 名:
Utility of Real-Time Three-Dimensional Echocardiography for the Assessment of Right Ventricular Morphology and Function in Large Animal Models
和訳)大型動物モデルにおけるリアルタイム3D心エコー法による右心室形態および機能評価の有用性
著  者:
湯地勇之輔、鈴木亮平、樋口里歩、齊藤尭大、手嶋隆洋、松本浩毅 、
小山秀一
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科獣医内科学研究室
掲載雑誌:
Journal of Clinical Medicine. 2022; 11: 2001.
Multidisciplinary Digital Publishing Institute
Open Access
doi: 10.3390/JCM11072001.

研究内容:
 哺乳類の心臓は2心房2心室で構成されています。ヒトやイヌで発生する心疾患の多くは左心系疾患であり、肺循環を担う右心系の重要性はこれまであまり解明されてきませんでした。したがって、右心室は長年にわたり“Forgotten chamber(忘れられた心腔)”と軽視されてきました。しかし、近年の研究により、右心室の形態や機能が心不全患者の予後を規定する重要な因子であることが判明し、右心室の形態や機能の評価が再認識されてきています。
 ヒトやイヌにおける心臓の形態や機能の評価は、心エコー図検査を用いることが一般的です。しかし、楕円形を呈する左心室とは異なり、右心室は三日月様の形態であることから、二次元(2D)心エコーによる正確な評価が困難とされてきました。近年、より詳細な心臓の形態および機能の評価が可能な三次元(3D)心エコーが開発されたことで、この複雑な右心室を詳細に評価することが可能となりました。そこで本研究では、麻酔下健常イヌを用いて、右心カテーテル法により評価した詳細な心形態および機能指標と、3D心エコーによる右心室の形態および機能指標の関係性を評価しました。
 本研究において、3D心エコーにより測定した右心室容積は、右心カテーテル法により測定した右心室容積を2D心エコーよりも良好に反映し、さらに各種薬剤により変化させた右心室容積の変化を良好に検出しました。また、一回拍出量を収縮末期右心室容積で除した数値と右心室駆出率は、右心室収縮機能と負荷のバランスを反映する右心室パフォーマンス指標と良好な関連を示しました。本研究結果は、3D心エコーが右心室の形態および機能をより正確に評価できるツールであることを実証しました。イヌを用いた研究ではありますが、ヒト医学にも貢献できる内容であることから、ヒト医療を主な対象とした国際的学術誌に掲載されました。

■研究者情報

鈴木 亮平(獣医学部 獣医学科 獣医内科学研究室・講師)

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