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【新着論文】犬と猫のてんかん外科:導入完了,そしてこれから

論 文 名:
1.Neurosurgery in canine epilepsy
和訳)犬のてんかんにおける脳神経外科

2.Neurosurgery in feline epilepsy, including clinicopathology of feline epilepsy syndromes
和訳)猫のてんかんにおける脳神経外科:猫のてんかん症候群の臨床病理とともに
著  者:
長谷川 大輔(日本獣医生命科学大学獣医学科・獣医放射線学研究室,生命科学総合研究センター)
齋藤 弥代子(麻布大学・小動物外科学研究室)
北川 勝人(日本大学・獣医神経病学研究室)
金園 晨一(どうぶつの総合病院・神経科)
チェンバーズ ジェームズ(東京大学大学院・獣医病理学研究室)
内田 和幸(東京大学大学院・獣医病理学研究室)
掲載雑誌:
1. The Veterinary Journal 285: 105852, 2022.
doi.org/10.1016/j.tvjl.2022.105852

2. The Veterinary Journal 290: 105928, 2022.
doi.org/10.1016/j.tvjl.2022.105928
研究内容:
 2016年に著者(長谷川)がThe Veterinary Journal(獣医学で最も古く、権威のある英国の学術誌)に、総説“Diagnostic techniques to detect the epileptogenic zone: Pathophysiological and presurgical analysis of epilepsy in dogs and cats(てんかん原性領域同定のための診断技術:犬猫のてんかんにおける病態理性学的術前評価)”を公表したことで、獣医領域における「てんかん外科(薬剤抵抗性てんかんを手術で治療する)」への関心が世界的に高まりました。これを機に著者ら(長谷川、齋藤、北川、金園、内田)は、獣医てんかん外科チーム(Veterinary Epilepsy Surgery Team: VEST)を結成し、2017年より科研費基盤研究(A)の助成を受け、「小動物臨床におけるてんかん外科の導入」(課題番号:17H01507)という研究課題を5年間(2021年度まで)遂行してきました。その個々の研究内容、特に臨床例(実際の患者さん)における(初の)てんかん外科の報告は度々このホームページ(論文セレクト)上でも紹介されてきました(過去記事参照)。そして2022年、The Veterinary Journal誌が“Epilepsy beyond seizures and drugs(てんかん、発作と薬を超えて)”と銘打った特集号(Special Issue)を組む事となり、2016年の総説以降の我々VESTの研究成果と現在の獣医てんかん外科の現状、そしてこれからの発展について、犬と猫に分けて総説を寄稿しました。犬の方(論文1)では、犬における術前評価と術式(手術方法)の選択について、そして各種術式の方法論を人のてんかん外科と比較して論じました。猫の方(論文2)では、犬とはやや異なるてんかんの病態=猫のてんかん症候群=についての概説と猫での術式選択(図:例として猫の構造的てんかんの術式選択を示します)について論じています。この2報の論文は、獣医てんかん外科が開幕した、すなわち研究課題である「導入」が完了したこと宣言しています。著者は2022年度より学術研究振興資金の助成を受け、この獣医てんかん外科をより発展させるため、診療と研究を継続しています。今後、このてんかん外科が世界中に普及し、より多くの犬猫が救済されることが期待されます。

■研究者情報

長谷川 大輔(獣医学部獣医学科 獣医放射線学研究室・教授)

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