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【新着論文】針生検で、がん抗原サバイビンを短時間で検出できる検査法の意義とは?

論 文 名:
Detection of bimodal survivin expressions in canine cancer types by flow cytometry compared to immunohistochemistry.
(和訳)免疫組織化学法と比較したフローサイトメトリーによる犬の癌種におけるサバイビンの二峰性発現の検出
著  者:
津本祥平1、田村恭一2、中澤優太3、藤田道郎3、塚田晃三1*
1. 日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医学科 獣医病理学研究室
2. 日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医学科 獣医臨床病理学研究室
3. 日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医学科 獣医放射線学研究室
*責任著者
掲載雑誌:
Frontiers in veterinary science 2025. 12:1552415-1552415.
FRONTIERS MEDIA SA
doi: 10.3389/fvets.2025.1552415
研究内容:
 動物病院で、“「既にがんがリンパ節転移している」、「全身麻酔しないと処置できないが、状態が良くないので麻酔リスクが大きく、何もできない」と言われた”。生活を共にする家族の一員だから、何とかしてあげたいが -----。
 悪性度の強い多くのがんは、発現するサバイビン分子のはたらきによって、細胞死の回避や無秩序な増殖を行っています。私たちはこのサバイビン分子を抗原(標的)にキラーT細胞を誘導してがんを縮小・拒絶することを目指しています。今回の(私たちの)論文では、全身麻酔の必要のない針生検でがんの一部を採材し、がん細胞内のサバイビンを蛍光抗体で染めてフローサイトメトリーで検出する方法を報告しました。数時間で結果が得られるため、速やかに次のステップであるがんワクチンを実施できます。そこで本学では、午前中にお預かりし、夕方にはお返しする「ワンデー初回プログラム」を実施しています。現在、がんワクチンの効果は2週間程で腫瘤サイズを一時的に半減できますが、その後の維持に苦戦しており、がんワクチンのみの治療では困難となっています。しかし、がんワクチンが効果を発揮する(2週間ほど)で状態が回復し、全身麻酔が可能となり、CT検査、外科手術、病理診断、化学療法といった流れを取り戻せるのであれば、本研究は命のリレーとして意義のある「治療に繋げる診断法」と私たちは考えています。
(文責:塚田晃三)

■研究者情報

塚田 晃三(獣医学科 獣医病理学研究室・教授)
田村 恭一(獣医学科 獣医臨床病理学研究室・講師)
藤田 道郎(獣医学科 獣医放射線学研究室・教授)