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日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

【新着論文】スマートフォンとAIで変わる獣医学教育 ―「話した内容」がそのまま学びになる新しい授業支援技術―

論 文 名:
Speech recognition tools for veterinary case learning: enhancing veterinary education with smartphone-based transcription and AI Summarization — a comparative study of workflow and usability.
(和訳)スマートフォンによる音声文字起こしとAI要約を用いた獣医学教育の高度化
―作業効率と教育的有用性の比較研究―
著  者:
余戸拓也 日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医学科 獣医外科学研究室
掲載雑誌:
Frontiers in Veterinary Science 2025年,12巻,1690085
Frontiers Media SA
doi: 10.3389/fvets.2025.1690085
研究内容:
 獣医学教育の現場では、症例検討やカンファレンスで交わされる専門的な議論を、学生が十分に理解し、後から振り返ることが、臨床的推察やコミュニケーションなど様々な能力の向上に重要です。しかし実際には、「話のスピードが速い」「専門用語が多い」「記録を取る余裕がない」といった理由から、学習効果が十分に得られない場面も少なくありません。
 本研究では、スマートフォンに標準搭載されている音声文字起こし機能と、AIによる要約技術を組み合わせることで、こうした教育上の課題をどこまで改善できるのかを検証しました。具体的には、獣医眼科の症例カンファレンスを録音し、①iPhoneの音声認識機能、②外部AI音声認識システム(Whisper)で文字起こしを行い、その後AIによって診療記録形式(SOAP)に要約しました。
 その結果、スマートフォンによる音声文字起こしは、読みやすさや専門用語の正確性、話の流れの理解しやすさにおいて高く評価され、学生の学習負担を軽減することが分かりました。また、AI要約を加えることで、症例のポイントが整理され、「何が問題で、どう考え、どう対応するのか」という臨床思考を学びやすくなることも示されました。
 一方で、臨床記録としてそのまま使用するには、人による最終確認が不可欠であることも明らかになりました。本研究は、AIを「人の代わり」にするのではなく、教育を支える道具として適切に使うことの重要性を示しています。スマートフォンとAIを活用したこの仕組みは、獣医学に限らず、医療・看護・専門職教育全般に応用可能な、新しい学習支援の形といえます。
(文責:余戸拓也)

■研究者情報

余戸 拓也(獣医学科 獣医外科学研究室・講師)