【新着論文】乳がんが免疫を逃れる新たな仕組みの発見
― 糖質コルチコイド産生に着目した新規治療戦略 ―
- 論 文 名:
- Tumor associated glucocorticoid inhibition by mifepristone reduces polymorphonuclear myeloid derived suppressor cells and promotes antitumor immunity in triple negative breast cancer bearing mice
(和訳)トリプルネガティブ乳がん移植マウスにおいてミフェプリストンはがん関連糖質コルチコイドを阻害することで顆粒球系MDSCを抑制し、抗腫瘍免疫応答を誘導する。 - 著 者:
- 小林正人、紺野千紗奈、清水絢斗、小林正典、堀達也
日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医学科 獣医臨床繁殖学研究室 - 掲載雑誌:
- Oncology Reports, 2026 Jan 30. 55: 60
doi: 10.3892/or.2026.9065 - 研究内容:
- 乳がんの進行には、ストレスホルモンである糖質コルチコイドが関与することが知られており、糖質コルチコイドは、がんに対する免疫応答を抑制し、腫瘍の進行を促進する作用をもつことが報告されています。糖質コルチコイドは主に精神的・身体的ストレスに応答して副腎から分泌されるため、ストレスを回避することががん治療に有効であるという考え方が広く受け入れられてきました。しかし、本研究では、糖質コルチコイドが宿主のストレス反応によって分泌されるだけでなく、乳がん細胞自身がコルチゾンから糖質コルチコイドを変換・産生していることを明らかにしました。さらに、この腫瘍由来の糖質コルチコイドが骨髄由来免疫抑制細胞(myeloid-derived suppressor cells: MDSC)を誘導し、T細胞による抗腫瘍免疫応答を抑制することを示しました。また、糖質コルチコイド受容体拮抗薬であり、臨床では主に堕胎薬として使用されているミフェプリストンが、糖質コルチコイドの作用を阻害することでMDSCの増殖を抑制し、抗腫瘍免疫応答を回復させることを明らかにしました。これらの結果は、乳がんが免疫抑制的な内分泌環境を自律的に形成し、自らの進行を促進している可能性を示しています。今後は、本研究成果を基盤として、小動物における乳がん治療への応用を見据えた研究を進め、将来的な臨床応用を目指していく予定です。
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(文責:小林 正人)
■研究者情報
小林 正人(獣医学科 獣医臨床繁殖学研究室・講師)
小林 正典(獣医学科 獣医臨床繁殖学研究室・准教授)
堀 達也(獣医学科 獣医臨床繁殖学研究室・教授)

