2019年 学長年頭挨拶

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2019年 学長年頭挨拶

 新年あけましておめでとうございます。
 私は、久しぶりの長期休暇で、すっかり気が緩み、そのせいか風邪をひいてしまいました。みなさんはどのような年末年始でしたでしょうか。
 今年、2019年は、5月から元号が新たになる年でもあり、格別な気持ちで新年を迎えられた方も多かったことと思います。

 昨年、2018年を振り返りますと、政治経済では、やはりアメリカ主導の世界各国への影響は続き、ますます内向きの保護主義的政権の台頭があり、移民、関税など問題が山積し、先の見えない状況にあり、経済面では、年初好調な発進を見せましたが、不安材料が出始めて、安定しない乱高下状況で推移しました。
 国内では倫理感を問われるような不正問題が多方面で発覚するなど残念なことが多くありました。
 科学技術の世界では、人工知能AIが進化し続け、そのスピードは加速度的に速くなっています。ますます世代間格差が生まれ、アナログ的実感のない生活が当たり前になる世界がすぐそこまで来ていると実感します。

 さて、2019年の展望と共に2018年の大学での主な取り組みを振り返りますと、昨年度策定した中長期計画におけるビジョン達成に向け、新たな一歩を踏み出しました。重点施策を教育、研究、管理運営、社会貢献、産官学連携、動物医療センターなどを中心とした第1期中期計画を改組した事務組織を推進軸とする教職協働にて進めてきました。
 これらの概要は、「教育でつなぐミライ」として、特色ある教育と学生満足度の高い教育の実施にあたり、学修支援システムを利用するなどによって各学科における特色ある質の高い教育へと推進されています。さらに各学科においては、それぞれの学士に相応しい基盤力、専門力が修得状況の可視化をはかるべく検討を進めております。大学院教育においては、教育者としての能力育成を図るティーチングアシスタント(TA)制度に加え、次年度より若手研究者育成とともに経済的支援を目的とするリサーチアシスタント(RA)制度を導入し、さらなる大学院教育の充実、強化を図っているところです。

▲12月に開催されたニチジュウシンポジウム2018の様子

 「研究でつなぐミライ」として、今年度より新設した研究部が中心となり、本学における研究ブランドとして、One Healthに貢献する「生命、食、環境」を繋ぐ研究拠点形成、つまり、人と動物が安心できる暮らしを目指しての事業を推進しているところです。また、この一環として、昨年12月には「ニチジュウシンポジウム2018」を開催しました。One Healthに貢献できる研究拠点づくりに相応しく大学院、学部の全分野の学生、教員一同に会して日頃の研究成果などが発表されました。今後も、大学が培っている知の資源を継続的に発信し続けることができればと考えます。

 また、質の高い研究と外部からの競争的資金獲得は、大学運営の基盤として不可欠な要素です。本年度の文部科学省研究費助成、受託・共同研究の総件数、金額は増加されており、益々活発な研究基盤が形成されつつあると考えます。
 「学生支援でつなぐミライ」として、アットホームで豊かな心を培う学修環境を整えるために学生からの要望や学修行動調査に基づいたサービス体制の構築に取り組んでいます。学生を取り巻く社会状況や教育環境が変化するなかで本学学生の学修、生活全般にわたる行動や意識、実態を把握する必要性からIR推進委員会によって、入学生、在学生、卒業生に対するアンケート調査を実施いたしました。在学生に対しては、授業、学修、生活全般、施設整備等多岐の内容にわたる学修行動調査を実施し、その結果、大学生活全般の満足度は7割強の学生が満足と回答し、概ね充実した学生生活を送っていることが判明した一方、授業や学習については、学科によって、カリキュラムや学習支援に対する評価に差異があり、今後の課題となりました。それぞれが調査結果を活用し、改善に向け検討されることを期待しております。

▲北海道チクレングループとのインターンシップでは
現在新商品を開発中

 「社会貢献・産官学連携」でつなぐミライとして、従前からの本学野生動物教育研究機構による群馬県や東京動物園協会などとの協定に基づく共同事業を推進しています。また、新たな連携事業として、学生とともに酪農畜産生産について活発な事業を進めている「くしろ丹頂農業協同組合」さらに、ニチジュウブランド商品の開発を目指した事業を「北海道チクレングループ」と進めており、その一部にインターンシップを導入した展開を模索しています。その他、民との連携、貢献として本学の多様な資源が、近隣市民の皆様とを繋ぐ有意義な交流の場にできればと考えております。

 「動物医療センター」でつなぐミライとして、臨床教育の充実は、獣医療を発展させ、社会貢献にもつながります。センター全体としては、手狭な施設の拡充から運営に至るまで様々な問題が顕在していますが、医療・臨床教育に関わる獣医師、看護師の労働条件や環境の改善、医療・臨床研究に取り組める環境整備、診療、診断の効率化を図るなど努力しております。本年度は獣医師、看護師の増員、教員の補充、リニアックの更新、人工心肺装置導入に伴い心臓外科手術を開始するなど、臨床教育の充実にむけ活発に活動をしております。また、厳しい状況のなか医療センター関係者の理解のもと、土曜日の診療を開始し、社会の期待に応えようとしております。労働環境を改善しながらの臨床教育体制、診療体制の整備を進めていることから、関係スタッフには大変ご迷惑をおかけしていますが、引き続き改善、整備を進めてまいります。

 その他、管理運営、施設整備、人事に関しては、事業計画として挙げ、実行しつつあり、入試や大学全体の広報体制を整備し、本学の実態を広く周知すべく取り組み、また、施設整備では、懸案となっていた付属農場アニマルファームの危険な肥育牛舎が、法人のご理解を得て、建替えがこの1月末に完了しようとしています。なお、残された老朽化施設が係る第一及び第二校地の土地、建物の再開発、再利用の計画策定への作業も開始し、本学の発展に最も機能的かつ効率的に資することができる形での土地、建物へと整備できるよう来年度の事業計画として申請しているところです。
 1年でできることは限られていますが、1年1年の積み重ねが、大きな実りをもたらすためにはこのわずかな進歩が重要なことであることを実感しております。継続するなかで、新たな局面への柔軟な対応が、大きな一歩前進に繋がることもあります。全教員・事務職員との総力で本年も邁進していきたいと思っております。本学の発展のために、気概を持って新しい年をスタートして頂くことを願っております。
 最後になりましたが、皆様とご家族のご健勝とご活躍を祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。

日本獣医生命科学大学
学長 阿久澤良造