令和8年度 入学式 学長式辞

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

令和8年度 入学式 学長式辞

 本日ここに新入生の皆さんを迎え、令和8年度入学式を挙行できますことは、本学にとってこの上ない慶びであります。大学院獣医生命科学研究科、獣医学部、ならびに応用生命科学部に入学された皆さん、誠におめでとうございます。教職員一同、皆さんを心より歓迎いたします。

 また、保護者・ご家族の皆様におかれましては、ご子息・ご息女を今日の日まで支え、本日の佳き日を迎えられましたことに、心より敬意を表しますとともに、お慶び申し上げます。さらに、ご多用の中ご臨席賜りました、学校法人日本医科大学理事長 弦間先生をはじめ、ご来賓の皆様に、厚く御礼申し上げます。

 本学は、明治14年に開学した日本最古の私立獣医学校を起源としております。明治初頭、わが国が近代国家として歩み始めた時代、軍馬の育成と畜産振興の要請のもと、欧米から獣医学が導入されました。そのような時代の流れの中で、本学の前身である私立獣医学校は、フランス獣医学を修めた9人の若き陸軍獣医官によって、文京区音羽の護国寺に開学し、私学として初めて獣医畜産学の教育を開始したと伝えられています。こうした創学の歩みの中で、本学には、生命を尊び、科学をもって社会に尽くす精神が受け継がれてきました。

 以来、本学は幾多の変遷を経ながら、昭和24年に獣医学科と畜産学科を擁する日本獣医畜産大学として設立され、平成18年には日本獣医生命科学大学へと校名を改めました。現在では、獣医学部に獣医学科と獣医保健看護学科、応用生命科学部に動物科学科と食品科学科、さらに大学院獣医生命科学研究科に獣医学専攻、獣医保健看護学専攻、応用生命科学専攻を置く複合大学へと発展しました。この長い歩みの中で、二万人を超える卒業生を社会のさまざまな分野に送り出しております。そして皆さんも、本日より、この歴史と伝統を受け継ぐ本学の一員となります。どうか誇り高き志を持って、学びの日々を積み重ねてください。

 さて、皆さんがこれから学ぶ時代は、技術革新と社会の変化が、かつてない速度で進む時代であります。生成系AIをはじめとする新たな技術は、学問、産業、医療、教育のあり方にも大きな変化をもたらしています。しかし、そのような時代であるからこそ大切なのは、単に情報を得ることではなく、何を問うべきかを考え、何が正しいかを見極め、誰のためにどのように生かすのかを判断する力であります。どれほど技術が進歩しても、最後に判断し、責任を担うのは人間です。皆さんには、根拠と倫理に基づいて自ら考え、判断し、行動できる力を身につけていただきたいと思います。

 本学では、そのような力を育むため、対面授業、少人数での実習、ゼミや研究室における卒業論文研究、そして学内外の現場での体験を重視しています。オンライン教材やシミュレーターなど、新しい教育手法も積極的に取り入れつつ、生命に直接向き合う経験を通して、実践的な知識と技術を身につけることを目指しています。知識は、机上で得るだけでは十分ではありません。実際に見て、触れ、考え、他者と協働しながら学ぶことによってこそ、真に生きた力となります。

 また、私たちの社会は、技術や合理性のみで成り立つものではなく、人と人との感情や信頼、支え合いの上に築かれています。だからこそ、専門知識のみならず、広い教養と豊かな人間性を養うことも欠かせません。本学には、多様な選択科目の配置に加えて、研究室、図書館、博物館、富士アニマルファーム、動物医療センター、アリーナなど、多彩な学びの場があります。授業や実習はもとより、研究活動、クラブ活動、学園祭、体育祭などにも積極的に参加し、多くの経験を重ねてください。そうした営みの中で、知識や技術だけでは得られない、他者を理解する力、困難を乗り越える力、仲間と支え合う力が育まれていくはずです。

 学問や研究の道には、常に明快な答えが用意されているわけではありません。実験や実習では、条件を整えても、予想どおりの結果が得られないことがあります。既知の報告と一致しないことや、容易に結論にたどり着けないこともあるでしょう。しかし、そのようなときこそ、先入観にとらわれず事実と向き合い、情報を吟味し、対話と議論を重ねながら、自らの考えを形づくっていくことが大切です。その積み重ねこそが、未知の課題に立ち向かう力を育てます。学生時代は、失敗を恐れず挑戦できる、かけがえのない時間です。自らの関心に従い、ぜひさまざまなことに挑戦してください。

 最後に、本学の学生として、心に留めていただきたいことがあります。式次第に記されている学歌の第4節をご覧ください。そこには、「人の世恵む鳥獣を愛しみ護るも国のため 敬譲相和ゆるみなく 愛と科学の聖業にいそしむ日々ぞさかえあれ」とあります。この一節は、本学の伝統と志を今に伝える言葉として、長く謳い継がれてきました。

 このような精神のもと、本学は学是を「敬譲相和」、到達目標を「愛と科学の聖業を培う」と定めています。「敬譲相和」とは、互いを敬い、譲り合い、和して力を尽くすこと、すなわち慈愛と人倫を備えた人として、協働のうちに歩む姿勢を意味します。また、「愛と科学の聖業を培う」とは、生命への慈しみと倫理観を根底に置き、科学的に考え、判断し、その力を人と動物、そして社会全体の幸福のために生かす力を身につけることを意味します。

 今日、ワンヘルスとワンウェルフェアの理念のもと、人と動物がともに健康で幸福に生きる共生社会の実現が強く求められています。本学は、その理念を教育の柱とし、獣医学部において動物の健康と福祉、公衆衛生への貢献を担う人材を育てるとともに、応用生命科学部において人と動物の関係、食の安全、生命の恵みを社会に生かす学びを通じて、持続可能な共生社会に貢献する人材の育成を目指しています。皆さんには、「敬譲相和」の精神のもと、「愛と科学の心」を備えた科学者、専門職、研究者として成長し、それぞれの立場から社会を支える存在となっていただきたいと願っております。

 どうか本学での時間を大切にし、多くの仲間と学び、悩み、喜びを分かち合いながら、自らを大きく育ててください。そして、4年ないし6年後に、晴れやかに成長した皆さんと、学位記授与式の日を迎えられることを心より願っております。

 本日は、誠におめでとうございます。

令和8年4月7日
日本獣医生命科学大学
学長 鈴木浩悦