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「この一冊」 図書のご紹介

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学
カモメ識別ハンドブック 改訂版

カモメ識別ハンドブック 改訂版


氏原巨雄・氏原道昭( 文一総合出版 2010年 )

ペンギンのしらべかた


上田一生 (岩波科学ライブラリー182 2011年)
2012/05/15更新201210号
分類番号は『カモメ』が488.64、『ペンギン』が408。そうだ、『ほぼ日』でエナガにハマッた皆さま! 当館のDVD『野鳥図鑑』第2巻“林や草原の鳥たち”に、木の枝に並んで押しくらまんじゅうしてるエナガの動画がありますよ! 悩殺…☆

そうでした。野鳥週間でした。
せっかくだから鳥本を…そうだ、先日『フクロウ:その歴史・文化・生態』が入ったじゃん!
これおススメだ…いや待て、待て待て。前にもフクロウ本、やったよ。ついついフクロウ好きなもんだから…そうだ究極のイケメン鳥本『クマタカ』がある!
 これはゼヒ…いや今年、写真集的な本が続いてるぞ…むむむ、いかにせん。
よし決めた。『アニマルウォッチング』に続いてバードウォッチング本にしよう。
まずはとびきりディープなやつを。『カモメ識別ハンドブック 改訂版』は、ながらく絶版になっていた初版がようやく改訂され、バードウォッチャーをうれし泣きさせた一冊だそうである。ほぼ新書サイズ、厚さは0.5cm強。余裕でインポケットな小冊子だが、中身はブラックホール並み。なんでも「カモメは本当に難しい」。
なるほど各種カモメの種類は多く、しかも似たり寄ったりだ。カモメとウミネコの差だって、顔に模様があればカモメ、という位の差だ(素人目)。そしてユリカモメ、ハシボソカモメ、ズグロカモメ、セグロカモメと続き、セグロカモメにしたってオオセグロカモメ、カスピセグロカモメ、カザフセグロカモメ…とある。そしてこの方たち、幼羽からどんどんお色直しして、変身なさるから始末におえない。そしてオドロキなことに、ハーフ、とかいう方もいる! 「雑種」というページがあるから間違いない。シロカモメ×セグロカモメとか、そういうこともアリなんて、筆者には仰天モノであった。「大型カモメは一羽一羽顔が異なる」という言い方も大ゲサではないこの世界、どんだけディープなのか。しかし本書のような一冊が出るからにはチャレンジャーも、マイスターもいるのであろう。「カモメほどフィールド経験の差の出るものはない」という。来たれ、挑戦者よ。冒頭に「カモメ類基本9種成鳥検索図」があり、「大きさは?」「初列風切の色は?」「背中の色は?」と識別していくフローチャートが載っている。

次は名シリーズというか迷シリーズというか、新刊が出るたびニンマリする“岩波科学ライブラリー”から『ペンギンのしらべかた』。
なぜペンギン研究は人気があるのか。お金になるとは思えないのに…と、のっけからかましてくれる著者の視点はなかなかユニーク。ペンギンの「泳ぎかた」「食べかた」「暮らしかた」といった生態を著しつつ、研究者の生態(?)も紹介していてところどころ笑える。「飛ばない」「怖くない」「弱くない」から扱いやすいというペンギンだが、しかし彼らのお住まいと言えば何といっても南極である。そこに辿りつくまでの「荒行」もキチンとご紹介。また「怖くない」ペンギンだが、やはり捕まえるにはコツが要り「捕まえかた」は必読である(エンペラーペンギンって20~30キロもあるんですねぇ)。
さらには森に暮らすペンギン、人里に暮らすペンギンなど、さまざまな「ペンギンのしらべかた」を読むうち、なんだか旅行気分にもなって、広がりのある一冊である。個人的には、昨年ご紹介した『ペンギン救出大作戦』のトレジャー号事件について、後日談など読めたことが嬉しかった。つながる読書って、やっぱりなんか楽しいんですよね。
本シリーズのツボである、楽しくさりげないイラストも健在で、つくづくニクいお手並みである。研究者の書いた「研究本」は、時折とんでもない創意工夫ぶりに唸らされるのだが、それも本書にはギッシリあって、ハイ、安心しておススメできる一冊です。

図書館 司書 関口裕子