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発酵本が増えている!
~うずうずと新刊が増えています~

最近出版された発酵本を集めてみました

1.「食品免疫学のプロが書いたウイルスに負けない最高の食事術」
戸塚護 著( 扶桑社 2021年 )

「免疫力アップ」「トクホ」などのパワーワードを、われわれは本当に理解しているのか!
ふわっと知ってるフレーズたちを、解説してくれるのは本学にいた戸塚センセイ。
発酵本ではないのだが、具体的な商品名と菌株名、その効果がズラッと並ぶ、圧巻のヨーグルト一挙解説ページがあるのでハズせない。

なお、2014年出版の「体が元気になる乳酸菌の摂り方」(著者は本学の元・学長の阿久澤センセイ)にもメーカー各社の比較があるので、数年たってヨーグルト業界がどうなっているか見てみることもできるよ。

2. 「図解入門 よくわかる最新発酵の基本と仕組み」
齋藤勝裕 著( 秀和システム 2021年 )

微生物との関係、醸造と発酵の違い、植物性食品と動物性食品それぞれの発酵、体に及ぼす生化学的・薬学的影響など、発酵全般についてわかりやすいテキストなら本書がおすすめ。
発酵による砂漠の緑化や、熱生産など、SDGsな視点もあってなおよし。

3.「発酵・醸造の疑問50」
東京農業大学応用生物科学部醸造科学科 編( 成山堂書店 2019年 )

「みんなが知りたいシリーズ」に、出ました発酵本。「クラフトビール(地ビール)って美味しいの?」などという直球の質問も載っていてびっくりだ。
50問目の「醸造科学特別実習って何?」には東農大醸造科の実習先一覧まで載っていた!
同シリーズの「乳酸菌の疑問50」(日本乳酸菌学会編 2020)もどうぞ。

4.「発酵はおいしい!イラストで読む世界の発酵食品」
ferment books・おのみさ 編著( パイインターナショナル 2019年 )

かわいいイラストで乳製品からお酒お茶、魚・肉・大豆の加工品まで、とにかく網羅。
それぞれの発酵のしくみや歴史まで盛り込んでいるのに幻のコーヒー「コピ・ルアック」や馬乳酒まで載っていて、編集すごいな!自宅でつくれるレシピ集まであって、もう脱帽である。
なお、2019年には「発酵食品の自然と文化研究会」が発足し、農山漁村文化協会から「世界の発酵食をフィールドワークする」が出版されていて、モンゴルの馬乳酒(アイラグ)やエチオピアのインジェラ(パンケーキ)などディープな食品を紹介している。
文章で発酵食の旅をする一冊と言えそうだ。

5.「47都道府県・発酵文化百科」
北本勝ひこ 著( 丸善出版 2021年 )

都道府県ごとに地域の特色と主な発酵食品と製造元、発酵食品を使った名産品・郷土料理、はては発酵に関係する神社仏閣やお祭り、博物館資料館、発酵を研究する大学や研究所まで網羅していて「旅行する前はこれをチェックせねば!」と思うくらい楽しい。ただ、麹チーズも開発している本学が載っていないのは悔しかった。

6.「麹本 KOJI for LIFE」
なかじ 著( 農山漁村文化協会 2020年 )

「なぜ自分で麹をつくるのか」。麹のつくり方を絵で、写真で、QRコードつき動画で説明してくれる著者は世界中で麹づくりのワークショップを開催中。道具も簡単に見つかるものを厳選、環境も選ばない。

手づくり麹の甘酒や味噌、塩麹、菩提酛(どぶろく)のレシピまで。コンパクトだが、みっちりだ。

なお、著者なかじ氏が蔵人頭を務めた千葉の酒造元「寺田本家」は5.の本に記載がある。また、本書の「種麹の入手先」はすべて5.に掲載されている。
さらに5.の鹿児島県の項にある種麹屋「河内源一郎商店」の山元正博・文晴親子の著書「麹親子の発酵はすごい!」、新潟県の研究機関として紹介された新潟薬科大学に研究協力した山﨑糀屋の山﨑京子氏の「糀入門 女将が伝える糀生活」と、この2冊は生産者自ら麹のポテンシャルを紹介しており、同時期に出版されたことも含めて興味深い。

7.「発酵食品の歴史 ビール、パン、ヨーグルトから最新科学まで」
クリスティーン・ボームガースバー 著( 原書房 2021年 )

発酵文化はつねに「腐敗」「細菌」と同一視されるリスクと共にあり、だが重宝され続け、「手間がかかる」という現代人感覚との融和も経て、現在に至る。そのドラマ。
ナポレオンの遠征が缶詰の発展につながったとか、探検家のクックは航海中、乗組員にザワークラウトを勧めていたとか。ネタの宝庫。

より民俗学的な視点から読むには2019年に同出版社からでた「発酵食の歴史」にトライしよう。

8.「ビールの自然誌」
ロブ・デサール/イアン・タッターソル 著( 勁草書房 2020年 )

古代ビールの復活から、ゴクゴク、プハー!!というヨロコビまで科学的に書きつくす!

分子系統学者で微生物研究者(ロブ)と古生物学者(イアン)の異色のコンビと、クラフトビール愛好20年の昆虫分類学者の解説で、黄金のビール本が爆誕してしまったのである。

9.「パンづくりのメカニズムとアルゴリズム」
?野精一 著( 柴田書店 2021年 )

なんでIT用語?! パンづくりを「コンストラクション(構築)」「メカニズム(仕組み)」「アルゴリズム(手順)」で解説したユニークな本書。だがしかしわかりやすいぞ! いったいどんなパンを目指すのか、そこからブレずに手順を踏めば、欲しいパンにたどりつけるはず。おさまりきらないネタは巻末に溢れている。
洋書では今年になって「Sourdough by Science : Understanding Bread Making for Successful Baking」が出版された。大量生産ではない、職人づくりのパンへの回帰ブームが出版界でも感じられる。

10.「日本のナチュラルチーズ」
佐藤優子 著( 虹有社 2019年 )

5.の都道府県別の発酵紹介本で、手薄なのがチーズ。チーズ工房はいま全国で300近くあるというが小規模なところも多い。
そこで本書もおすすめしておく。20軒の工房・ショップと製品についてデータ・写真つきで紹介。テイスティングのコメントあり。国産チーズのコンテストについても紹介。

なお、「ノンホモ・低温殺菌牛乳と酢と塩だけ、乳酸菌もレンネットも不要」というチーズの作り方本「酪農母さんが教える台所チーズ:簡単楽しいおいしい」も昨年出版された。副産物であるホエーの利用法も紹介

11.「Miso Tempeh Natto & Other Tasty Ferments : A step-by-step Guide to Fermenting Grains and Beans」
Kirsten K.Shockey & Christopher Shockey 著( Storey Punlishing 2019年 )

ガチの洋書発酵本がでた! Tempehとはインドネシア発祥の発酵食である。発酵の仕組み、作り方、そして実際のレシピまで、写真満載でぴかぴかの1冊だ。甘酒や溜まり、塩麹など日本の発酵食をはじめ、かなりニッチに攻めている。「ミソ・チーズケーキ」「ミソ・チョコレート・バブカ」など美味しそう。

12.「Koji Alchemy : Rediscovering Magics of Mold-Based Fermentation」
Rich Shih & Jeremy Umansky 著( Chelsea Green Publishing 2020年 )

出版時から話題のガチ洋書麹本。麹用語、発酵の仕組み、各国の発酵食、麹が食品(ステーキとか)に及ぼす効果など、丁寧な解説とともにレシピが掲載されている。イラストや写真は控えめで硬派な印象だが「ホット・みそミルク」や「甘酒ライブレッド」など、やはり気になるレシピも載っているのである。

■参考:過去の「この一冊」でとりあげた発酵関連本
「和・発酵食づくり」 林弘子 著( 晶文社 2009年 )2011.3.3紹介


「DASHI and UMAMI The heart of Japanese cuisine」 EAT-JAPAN 編( Cross Media Ltd. 2009年 )2012.2.15紹介


「チーズのちから:フェルミエ吉田牧場の四季」 吉田全作(ほか)著( ワニブックス 2010年 )2012.4.2紹介


「フランスパン・世界のパン本格製パン技術:ドンクが教える本格派フランスパンと世界のパン作り」
ブランジュリーフランセーズドンク 著( 旭屋出版 2001年 )2016.12.26紹介


「発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ」 小倉ヒラク 著( 木楽舎 2017年 )2019.3.1紹介