食のいま
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第28号:「小説の中の食Ⅳ(歴史の勉強)-前-」

田中芳樹という作家を知っていますか。なかなかにしゃれた(?、皮肉っぽい)会話や文章が巧いライトノベルズの作家です。中国を舞台にした小説や、中国などの昔話や神話などを取り入れた小説を書いていて、私は読むたびに「歴史や社会をよくまあ知っているな」と感心させられています。
この作家はファンタジー小説も書いていて、”バルト海の復讐”(出版社:光文社)という小説には、中世のドイツ付近の歴史・習俗がよく書かれています。海洋冒険小説という観点以外に“食”という観点からもいくつか書かれていて、おもしろいものです。
中世のヨーロッパでは、二圃制や三圃制の農業といわれるものが行われていました。米よりも収穫率の低い麦類(これも小説中に出てきます)の栽培のために、必ず土地を輪番制にして休ませる必要がありました。また、冬の間は家畜に食べさせる飼料がないため、冬の前に豚などは次年度の繁殖用の分以外を肉にして、しかも冷蔵庫や冷凍庫など無いので塩漬けにして保存していたと言われています。この小説にも塩漬けの豚肉やアルコール度数の高い(保存性の良い)ビールの話が出てきています。しかも、道々秋にドングリなどで太らせた豚の塩漬け肉を作っていたと言うのですから、なかなか芸が細かいですよね。では、この塩漬け肉はどのように料理したのでしょう。ローストかな、ゆでたのかな…想像を膨らませると楽しいものです。 (つづく)