食のいま
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第62号:「食品を高温加熱するとできるアクリルアミド」

 2016年2月に内閣府食品安全委員会から「加熱時に生じるアクリルアミドに関する評価書案」が発表されました。食品を揚げる、炒める、焼くなど120℃以上に加熱すると、食品に含まれるアミノ酸の一種であるアスパラギンと、ブドウ糖や果糖のような還元糖が反応してアクリルアミドが生じます。アクリルアミドは、マウスやラットのような実験動物を使った試験結果から発がん性を有することが報告されており、国際がん研究機関も「ヒトに対しておそらく発がん性がある物質」としています。
 アスパラギンや、ブドウ糖、果糖は、ほとんどの食品に含まれている一般的な食品成分ですし、揚げる、炒める、焼くという調理も毎日の食事作りの際に行うことですので、私達は皆、多かれ少なかれアクリルアミドを摂取しているわけです。言い換えれば、発がん物質といえども、これをまったく摂取しない食生活はあり得ないということです。アクリルアミドを摂取しても、私達の体はそれを解毒して尿中に排出する能力を持っていますので、すぐには健康を害することはありません。また、上記の食品安全委員会の評価書案では、日本人が食事から摂取するアクリルアミドは、1日体重1 kgあたり平均約0.2 μgと推定されており、これは動物実験で発がん性が認められる量の1000分の1くらいですので、過度に心配する必要はありませんが、無理なく減らせる範囲でアクリルアミドを減らす努力をする必要があるとしています。
 アクリルアミドは無色の物質ですが、食品を揚げたり、炒めたり、焼たりした場合に、コゲと一緒に生じます。ですから、食品をできるだけこがさないように調理をするとアクリルアミドの生成を減らせます。特にアスパラギンが多くアクリルアミドの生じやすいじゃがいもを揚げる場合は、茶色のコゲ色がつく前、薄黄色の段階で揚げ油から出しましょう。また100℃以下の温度ではアクリルアミドはほとんど生じないので、ゆでたり、煮たりする料理ではアクリルアミドの生成を心配する必要はありません。火の通りにくい食材は下ゆでしてから炒めるなど、長時間高温にさらされて表面がこげることのないような工夫が必要です。揚げる、炒めるといった油を使う料理を減らし、ゆでる、煮る、蒸すという料理を増やし、また生の野菜や果物を摂取するといった食生活の工夫も、アクリルアミドの摂取量を減らせるだけでなく、油の過剰摂取によるカロリーの取り過ぎを防ぐ効果があります。

産経ニュース 2016.2.12 高温調理で生成のアクリルアミド 食安委「摂取量減らす必要」
http://www.sankei.com/life/news/160212/lif1602120010-n1.html

朝日新聞ニュース 2016.2.16 アクリルアミド「発がん性懸念なしと言えず」食品安全委
http://www.asahi.com/articles/ASJ2J5J0SJ2JUTFL00Z.html

農林水産省 食品中のアクリルアミドに関する情報 家庭で消費者ができること
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/a_syosai/teigen/syohisya.html

▲食品安全学教室では、じゃがいもや野菜の加熱調理によるアクリルアミドの生成についての研究を行っています。