食品安全学教室 Research and faculty introduction

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日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

研究室紹介と研究内容

 食品の安全にかかわる問題は、病原菌やカビが作る毒素、重金属、環境汚染物質、アレルギーを引き起こす各種アレルゲン、調理・加工中に食品成分の熱反応で生じる発がん物質、農薬、食品添加物、遺伝子組換え食品など広い分野にわたっています。また、食品の信頼性を損ねる原材料や加工方法の偽装も、安全性に関わってくる場合があります。
 本研究室では、これら様々な食の安全に関する問題の中から研究テーマを設定し、食品のリスク管理に資するデータの提供、食品の安全性を高める加工・条件の提案、安全性と機能性に考慮した新たな食品・食品素材の開発といった3つの目標に対して、研究活動を展開しています。

特に力を入れているSDGsへの取り組み

2 飢餓をゼロに
全ての人に、食品の安全と信頼を確保できるようにするための研究を行います。
3 すべての人に健康と福祉を
全ての人に健康を、医食同源を可能とするような食品およびその原料供給のための研究開発を行います。
12 つくる責任 つかう責任
グリーンケミストリーをベースとした革新的な食糧生産技術を提供するための研究開発を行います。

食品科学科における持続可能な開発目標(SDGs)

教員紹介

和久先生
  • 氏 名知久 和寛 准教授
  • 学 位博士(農学)
  • 専門分野生物有機化学、応用生物化学、糖質科学
  • 担当科目食べ物の科学入門、食品安全学、食品添加物論、食品安全学実験、
    卒業論文、食品安全学特別演習(博士前期課程)、特別講義(博士前期課程)、食品安全学特論(博士前期課程) 、食品安全学特別研究(博士前期課程) 、応用食品科学特別演習(博士後期課程) 、応用食品化学特別研究(博士後期課程)
研究者情報

Close-Up「研究」

早期ゼミの研究テーマ

●食用キノコを用いた新たな発酵食品・食品原料の開発

 食用キノコを用いた味噌や醤油、チーズなどの新たな発酵食品の開発や食品原料の製造に向けた基礎研究を行います。まずは各種キノコの発酵工程における生育具合を比較し、発酵食品の製造に適したキノコの選抜を行います。その後、キノコを用いた発酵食品にどういった付加価値がつくか、安全性はどうかについて評価します。

▲味噌試作品

卒業研究テーマ

●キノコ中に含まれる危害成分の分析

 キノコは現在多くの種類を量販店や山で容易に入手することができ、食用や薬用として好んで食されている食材の一つです。しかし、一部のキノコは食べることで中毒症状を起こすことが知られています。その原因物質の一つにシアン化合物があります。シアン化合物は青酸配糖体などの形でキノコ中に蓄積されており、マイタケ・エリンギなどなじみ深い食用キノコ中でも人体内の酵素で分解できる程度で微量に含まれています。本研究では、各種キノコ中でのシアン化合物の蓄積形態を分析するとともに、その発生要因や蓄積要因を調べています。

▲フィールドワークで採取したキノコたち

●食用・薬用キノコ中の機能性成分や危害成分の代謝機構の解析

 キノコは自然界に存在する代表的な多糖であるデンプン、セルロース、ヘミセルロース、キチンなどの植物性・動物性多糖の資化能に長けており、森の分解者と呼ばれています。またβ-グルカンやマンナンなどの細胞を構成する多糖やトレハロースなどの貯蓄性オリゴ糖、ナメコなどで見られるヌメリ成分である糖タンパク質などを効率的に生産することが知られています。また一部のキノコは体に危害を及ぼす成分を蓄積することも知られています。
 本研究では、分子生物学的な手法を用いることでこれら機能性成分や危害成分の合成や消化に関与している酵素遺伝子を解析し、生合成系を解明することを目的にしています。

●食品の加熱加工時に生じるメイラード反応産物の分析

 近年の健康に対する関心の高まりにより、糖質の生体調節機能が注目されています。特にオリゴ糖は腸内環境を改善するプレバイオティクス素材として広く認知されており、様々な食品中に添加されています。オリゴ糖など糖質の生体調節機能を重視した機能性表示食品の研究開発が進められている中で、加熱加工を経る食品に対しても糖質が添加される機会も増えてきています。食品の加熱処理は食品の微生物汚染を低減し、その保存性や消化性を高める方法ですが、一部の糖質は加熱により褐変化と呼ばれる非酵素的反応で他の化合物に変化することがあります。本研究では、これら糖質の構成単糖の種類やその結合様式に依存した加熱時の反応産物の分析やその化学反応速度論的な解析を行っています。

▲精製したメイラード反応産物

学生からの一言

大原 萌香(食品科学科4年次)

 人生100年時代となった現在、私は食の安全を支えていく立場から人々の健康な未来を考えていける専門家になることを目指しています。こういった考えの中で、卒論では食用キノコに含まれるシアン化合物についての研究をすることにしました。私たちが口にしている身近な食用キノコ類にも、人体の酵素で分解できる程度ですがシアン化合物が含まれています。
 「毒薬変じて薬となる」とも言いますよね。キノコ中のシアン化合物を危害成分と捉えるか、それほどの濃度にならないなら実は保健機能の向上化につながっていたりするのか・・・興味深いです。また「全ての化学物質は毒にも薬にもなる」と言われていますが、食品含めて何でも接種するバランスが重要です。こういったリスクとベネフィットを考えて研究していくのが、食品安全学教室の特徴です。
 本研究室を担当している知久先生は、とても親切で研究内容のみならず、日頃の悩みまでも親身に聞いてくれます。それにより、研究室全体の士気が高まっており、室員同士、切磋琢磨しながら、研究活動を進めています。