食用キノコを用いた味噌や醤油、チーズなどの新たな発酵食品の開発や食品原料の製造に向けた基礎研究を行います。まずは各種キノコの発酵工程における生育具合を比較し、発酵食品の製造に適したキノコの選抜を行います。その後、キノコを用いた発酵食品にどういった付加価値がつくか、安全性はどうかについて評価します。
▲味噌試作品
キノコは現在多くの種類を量販店や山で容易に入手することができ、食用や薬用として好んで食されている食材の一つです。しかし、一部のキノコは食べることで中毒症状を起こすことが知られています。その原因物質の一つにシアン化合物があります。シアン化合物は青酸配糖体などの形でキノコ中に蓄積されており、マイタケ・エリンギなどなじみ深い食用キノコ中でも人体内の酵素で分解できる程度で微量に含まれています。本研究では、各種キノコ中でのシアン化合物の蓄積形態を分析するとともに、その発生要因や蓄積要因を調べています。
▲フィールドワークで採取したキノコたち
キノコは自然界に存在する代表的な多糖であるデンプン、セルロース、ヘミセルロース、キチンなどの植物性・動物性多糖の資化能に長けており、森の分解者と呼ばれています。またβ-グルカンやマンナンなどの細胞を構成する多糖やトレハロースなどの貯蓄性オリゴ糖、ナメコなどで見られるヌメリ成分である糖タンパク質などを効率的に生産することが知られています。また一部のキノコは体に危害を及ぼす成分を蓄積することも知られています。
本研究では、分子生物学的な手法を用いることでこれら機能性成分や危害成分の合成や消化に関与している酵素遺伝子を解析し、生合成系を解明することを目的にしています。
近年の健康に対する関心の高まりにより、糖質の生体調節機能が注目されています。特にオリゴ糖は腸内環境を改善するプレバイオティクス素材として広く認知されており、様々な食品中に添加されています。オリゴ糖など糖質の生体調節機能を重視した機能性表示食品の研究開発が進められている中で、加熱加工を経る食品に対しても糖質が添加される機会も増えてきています。食品の加熱処理は食品の微生物汚染を低減し、その保存性や消化性を高める方法ですが、一部の糖質は加熱により褐変化と呼ばれる非酵素的反応で他の化合物に変化することがあります。本研究では、これら糖質の構成単糖の種類やその結合様式に依存した加熱時の反応産物の分析やその化学反応速度論的な解析を行っています。
▲精製したメイラード反応産物