食品安全学教室

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研究室紹介と研究内容

食品の安全にかかわる問題は、病原菌やカビが作る毒素、カドミウムやヒ素、放射性物質のような環境汚染物質、アレルギーを引き起こす各種アレルゲン、調理・加工中に食品成分の熱反応で生じる発がん物質、農薬、食品添加物、遺伝子組換え食品など広い分野にわたっています。また、食品の信頼性を損ねる原材料や加工方法の偽装も、安全性に関わってくる場合があります。これら様々な食の安全に関する問題の中から研究テーマを設定し、研究活動を行っています。

■関連書籍

・植物細胞壁実験法
(分担執筆,NMRによる糖鎖の構造解析)

■マイナビニュースインタビュー記事

■食品科学科便り 食のいま

教員紹介

吉田充教授
  • 氏 名:吉田 充 教授
  • 学 位:農学博士
  • 専門分野:生物有機化学、分析化学
  • 担当科目:食べ物の科学入門、食品安全学、食品添加物論、生物統計学、
    食品安全学実験、卒業論文、食品安全学特論(博士前期課程)、食品安全学特別演習(博士前期課程)、
    食品安全学特別研究(博士前期課程)、特別講義(博士前期課程)、応用食品化学特別演習(博士後期課程)、
    応用食品化学特別研究(博士後期課程)
  • 研究者情報 (クリックで研究者情報ページへジャンプします)
和久先生
  • 氏 名:知久 和寛 講師
  • 学 位:博士(農学)
  • 専門分野:生物有機化学、応用生物化学、糖質科学
  • 担当科目:食べ物の科学入門、食品安全学、食品添加物論、食品安全学実験、
    卒業論文、食品安全学特別演習(博士前期課程)、特別講義(博士前期課程)
  • 研究者情報 (クリックで研究者情報ページへジャンプします)

Close-Up「研究」

現在進行中の卒論研究テーマ

●調理・加工時の加熱によりアミノ酸と糖が反応してできる発がん物質の実態調査

 アクリルアミドは、アスパラギンが還元糖と高温加熱されるとメイラード反応により生じることが知られている物質であり、120 ℃以上の高温加熱した食品中に高濃度で検出されることがあります。アクリルアミドは動物実験において発ガン性を示すことから、ヒトにおいても食品中に含まれるアクリルアミドの摂取による健康被害が懸念されています。本研究では、揚げる炒めるなど高温加熱工程を経た食品に実際にどのくらいの濃度のアクリルアミドが含まれているかの実態調査を行うこと、また食品中に含まれるアクリルアミドの高感度・高精度な分析技術の確立を目指しています。

調理実験中(ジャガイモの炒め)

代表的な研究成果

Acrylamide in stir-fried potato and onion for simmered dishes in Japan

Mitsuru Yoshida, Marino Isamu, Kazuhiro Chiku

Food Safety 5(2) 54-60 2017年6月

●東日本大震災時の福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性物質の食品加工における動態解析(農研機構食品研究部門との共同研究)

 2011年3月の東日本大震災の津波被害により発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故において、放射性核種が環境中に飛散しました。厚生労働省は食品中の放射性物質を管理するために、平成23年3月に暫定規制値(平成24年4月からは現行の基準値)を設定し、原子力災害対策本部が定めたガイドラインに基づいた食品中の放射性物質検査を開始しています。放射性物質検査は、NaIシンチレーション検出器によるスクリーニング検査とゲルマニウム半導体検出器(下図)による精密な検査とを組み合わせて実施されています。本研究では、農産物、食品を用いた実験により、放射能測定実務に携わる人達に、測定値の精度を高める方法や食品加工を行った場合の放射性物質の動態などの具体的な情報を提供することを目的にしています。
 なお、本研究は、農研機構食品研究部門との共同研究であり、主な分析はそちらで行っています。

ゲルマニウム半導体検出器

代表的な研究成果

放射能の不均一分布がゲルマニウム半導体検出器を用いた食品の放射能測定値に及ぼす影響

吉田 充、西塚 菜穂子、村上 恵理、八戸 真弓、濱松 潮香

日本食品科学工学会誌 63(3) 135 2016年3月

玄米の低とう精加工および炊飯における放射性セシウムの低減

吉田 充、市川 水音、富田 樹、知久 和寛、八戸 真弓、濱松 潮香、岡留 博司

日本食品科学工学会誌 66(2) 47-51 2019年2月

●農産物や食品の偽装を見破るための判別技術の開発(農研機構食品研究部門との共同研究)

 近年、「食の安全」とそれを支える「信頼」に対する消費者の意識が高まる中、国内で販売される全加工食品に主原料の原産国表示を義務づける新たな食品表示基準が2017年9月に施行されました。しかし、食品の産地偽装は後を絶たないのが現状であり、解決しなくてはならない課題の一つです。
 現在、科学的な産地判別の主な方法としては、元素組成分析、DNA分析、安定同位体比分析の3つが挙げられています。元素組成に関しては、加工工程での元素の流入や流出によりその組成に影響がでる可能性があり、DNA分析では同品種が複数の産地で栽培・飼養されている場合における産地判別は難しいのが現状です。一方、加工工程による影響を受けにくい安定同位体比は産地偽装の多い加工食品の産地判別に適しています。そこで、本研究では炭素、窒素、酸素など軽元素の安定同位体比を利用して、農産物や食品の産地判別法を確立することを目的にしています。
 なお、本研究は、農研機構食品研究部門との共同研究であり、安定同位体比分析はそちらで行っています。

農研機構食品研究部門での共同研究実験

●オリゴ糖やアミノ糖の褐変化反応による新規反応生成物の解析

 近年の健康に対する関心の高まりにより、糖質の生体調節機能が注目されています。特にオリゴ糖は腸内環境を改善するプレバイオティクス素材として広く認知されており、様々な食品中に添加されています。オリゴ糖など糖質の生体調節機能を重視した機能性表示食品の研究開発が進められている中で、加熱加工を経る食品に対しても糖質が添加される機会も増えてきています。食品の加熱処理は食品の微生物汚染を低減し、その保存性や消化性を高める方法ですが、一部の糖質は加熱により褐変化と呼ばれる非酵素的反応で他の化合物に変化することがあります。本研究では、これら糖質の構成単糖の種類やその結合様式に依存した加熱時の反応産物の分析やその化学反応速度論的な解析を行っています。

オリゴ糖の褐変化反応

糖の結合様式の違いで褐変化度合いが著しく異なる。

代表的な研究成果

中性加温条件下に起こるオリゴ糖とアミノ糖の分解特性の評価

知久 和寛

アグリバイオ 1(4) 502-507, 2017年4月

Epimerization and decomposition of kojibiose and sophorose by heat treatment under neutral pH conditions

Kazuhiro Chiku, Mami Wada, Haruka Atsuji, Arisa Hosonuma, Mitsuru Yoshida, Hiroshi Ono, Motomitsu Kitaoka

Journal of Applied Glycoscience 66(1) 1-9 2019年2月

●酵素合成法による食品利用に向けたオリゴ糖の大量調製技術の開発

 オリゴ糖にはプレバイオティクス効果、整腸作用、免疫力向上といった様々な生理機能が報告されています。そのため、機能性を有したオリゴ糖の高効率かつ安価で安全な生産方法が求められています。現在市販されているオリゴ糖の多くは、微生物が生産する酵素を用いて生産されています。微生物は属や種によって活性の異なる酵素群を持っており、それらを利用したユニークなオリゴ糖の代謝系を有しています。現在行われているオリゴ糖の酵素生産は、微生物の保有する糖代謝や関連する酵素反応を理解し、それを利用することで可能となった技術です。
 本研究に関連するテーマの一つとして、食用・薬用キノコの持つオリゴ糖関連酵素を対象に研究を行っています。キノコは自然界に存在する代表的な多糖であるデンプン、セルロース、ヘミセルロース、キチンなどの植物性・動物性多糖の資化能に長けており、森の分解者と呼ばれています。またβ-グルカンやマンナンなどの細胞を構成する多糖やトレハロースなどの貯蓄性オリゴ糖、ナメコなどで見られるヌメリ成分であるムチンなどの糖タンパク質を効率的に生産することが知られています。すなわち、これら多糖やオリゴ糖の資化や生合成に関わる多くの酵素群を保有しています。これらキノコの持つオリゴ糖関連酵素や代謝系を利用し、機能性を有した新しいオリゴ糖を生産することを目指しています。

シャーレ上で培養したトキイロヒラタケ

●キノコにおける毒性物質の発生要因や蓄積要因を考慮したリスク管理

 キノコは現在多くの種類を量販店や山で容易に入手することができ、食用や薬用として好んで食されている食材の一つです。しかし、一部のキノコは食べることで中毒症状を起こす毒キノコとして知られています。その原因物質の一つにシアン化合物があります。シアン化合物は青酸配糖体などの形でキノコ中に蓄積されており、マイタケ・エリンギなどなじみ深い食用キノコ中でも人体内の酵素で分解できる程度で微量に含まれています。本研究では、各種キノコ中でのシアン化合物の蓄積形態を分析するとともに、その発生要因や蓄積要因を培養法や分子生物学的手法を駆使しつつ調査しています。

フィールドワークで採取したキノコたち

学生からの一言

高坂 陸(食品科学科4年次)

 食用キノコ中に含まれるシアン化合物(植物などに蓄積されている、人体に有害なもの)濃度の測定についての研究を行っています。2004年にこれまで食用として食べられていたスギヒラタケによる食中毒が数多く起こりました。その際、キノコ中に含まれるシアン化合物の濃度が高かったことが分かっています。実は身近な食用キノコ類にも人体で分解できる濃度のシアン化合物が含まれていることがあります。私は、そのような食用キノコの育成条件や保存条件を変えることにより内在するシアン化物濃度がどのように変化するかを調べています。


真木野 芳紀(食品科学科4年次)

 私は、炒めもやし中に含まれる発がん性物質であるアクリルアミドの研究をしています。もやしは非常に安価であり野菜炒めに用いられることの多い食材ですが、炒める条件によっては比較的高濃度のアクリルアミドを生成しうる野菜であることが知られています。そこで私は、もやしの炒めを行なった際に加熱条件や炒め時間の違いによってどのくらいアクリルアミドが生成するかを分析し、さらに生成するアクリルアミドの濃度を低減する調理方法を調べています。


小林 壱(食品科学科3年次)

 私は食品の安全性を学ぶために食品安全学教室へ入室しました。食品科学科では2年生の後期試験が終わった後に研究室配属が決まり、早ければ2年生の春休み期間(2月以降)から卒業研究に参加できます。入室して4ヵ月程度が経っていますが、食品安全学教室は明るい雰囲気でありとても居心地がよいです。さらに先生と生徒の距離が近いため、研究の話だけでなく今後の就職活動についてなど何でも相談しています。卒業研究として取り扱っているテーマも食の安全にかかわる幅広い分野がありますので、積極的に学び、やりたいテーマを見つけていこうと思っています。