食品工学は、食品加工・製造中に生じる現象および人が食品を食べる際に生じる現象について工学的手法を用いて数量化する学問領域です。テーマは主に3つあります。
①二酸化炭素マイクロバブルを利用した食品殺菌技術の開発:
微小気泡(マイクロバブル)化した二酸化炭素を利用した食品殺菌装置を開発し、その殺菌メカニズムの解析を行っています。さらに、二酸化炭素マイクロバブル殺菌装置を使って殺菌処理した食品(ホウレンソウ、ブロッコリーなどの固形状食品や清酒、果汁などの液状食品・飲料)の品質評価を官能評価や香気成分などの食品成分を測定することで行っています。
②食品咀嚼時のフレーバーリリースの研究:
食品をモグモグ食べている時(咀嚼時)に感じるフレーバーについて味・香気成分を測定しています。人が喫食する場合も測定しますが、咀嚼マシーンを使って、計測が難しい高齢者の咀嚼をシミュレートして食品開発に生かしています。
③食品の食感表現の研究:
食品を食べている時に感じる食感表現について、日本語の擬音語を整理し、外国語(フランス語・ドイツ語・中国語・タイ語など)との比較を行っています。
食品の製造時に起こる現象と消費時に起こる現象を両面から数的に把握することにより、効率のよい食品加工製造工程の構築や、嗜好性の高い食品製品の創成を目指しています。
また、食品加工製造の文化的背景を理解することを目的として、食物に関する古い文献や、海外の日記などの解読輪講も行っています。
乳やバターの代わりに植物由来の食材を使ったパン作りの方法を確立し、おいしさや栄養に関わる分析を行う。
野菜の未利用部位の成分分析を行い、持っている有効成分を活かした利用方法を考案する。さらに、より簡便に有効利用できる食品加工技術を開発する。
人が食品を咀嚼中に使う筋肉活動量や咀嚼力を測定し、実際に食品から放散されている香気成分量との関係を計測しています。
食品工学研究室で作った
「咀嚼モデル器」
(特許第5062590号)
写真矢印に示すような二酸化炭素の微小気泡(マイクロバブル)により食品が殺菌・酵素失活されます。写真のような二酸化炭素マイクロバブルにより殺菌・酵素失活した清酒を造ることに成功しました。現在、その殺菌・酵素失活メカニズムを研究しています。
二酸化炭素の微小気泡
(マイクロバブル)
二酸化炭素マイクロバブルにより
殺菌・酵素失活した清酒
「獺祭早田」
「食品の処理方法及び食品の処理装置」特許第5131625号
「Food processing method and food processing apparatus」欧州特許第2181612号, (France)
「処理方法および処理装置」特許第5716258号
「液状物の処理方法」特許第6089718号
私は卒業研究として、煎餅やクラッカーなどのかたさをレオナ―という物性測定装置を用いて測定しています。また官能評価を行い、パネリストから食感表現を収集し、物性測定のデータと関連があるのかどうかを調べています。この研究を行うことにより、食品のパッケージに用いられている“ザクザク”“パリッ”と言った食感表現のオノマトペの正確な表記に役立つのではないかと思い、研究しています。
私の卒業研究テーマは清酒の品質劣化についてです。清酒は人肌の温度帯で品質が悪くなることが昔から言われています。それには火落菌という特殊な細菌が関係していると考えています。本研究では清酒の品質を解析するために、成分分析や官能評価を行っています。このメカニズムを解明することで、日本の伝統産業である清酒製造の謎を解き明かしたいと考えています。
私は食品を食べているときに感じる香りについての研究をしています。人は食品を食べているときに感じる香りは息が口の中から鼻に抜けるときに感じていますが、人によって噛み方や息流速が違うので香りの感じ方も違います。そこで、咀嚼モデル器を使用して様々なスピードや力で食品を咀嚼させたときに放散される香気成分を測定し、咀嚼力と香りの感じ方について解析しています。