図書館MENU

ニュース

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

この一冊「救えない地方のペットたち 獣医療格差への挑戦の軌跡」に獣医放射線学研究室 長谷川大輔教授からコメントが届きました!

※【犬と飼い主さんのためのクラウドファンディング(寄付金控除型)】応援企画!※
犬と飼い主の負担を減らすために。犬の脳腫瘍治療に新たな一手を!
※このクラウドファンディングは2023年5月31日に終了しました。
 ご協力ありがとうございました。


 地域格差というのは、当事者ではないとわかりにくい社会問題ですが、本書は現役の獣医師さんからの声という意味でインパクトがあります。
   

■長谷川教授からのコメント

■本書では、高度獣医療へのアクセスが意外に難しいことが指摘されていますが、先生もそういったもどかしさを感じたことがありますか?

 

長谷川:本学もそうですが、大きな二次、三次診療施設では完全予約制が一般的です。大学病院の場合はさらに、各診療科や先生の診療日も限定されていますよね。
そうなると「すぐ診る」ことは残念ながら殆ど不可能です。私の担当する神経科もなかなか予約がとれないので「ディズニーランドのアトラクションみたい」と噂されています。

■それでも地方からいらっしゃるペットと飼い主さんもおられるわけですね。

 

長谷川:私が本学で働き始めた20年前はほぼ毎週でしたね。
 最近は地方にもCTやMRIを備えた施設が増えたので、月に1件ぐらいという体感です。
 それでも北関東、福島、新潟や長野、静岡、岐阜…広範囲から来院されます。
 放射線治療機器はまだまだ地方には少ないです。放射線治療は複数回必要なので、ペットも飼い主さんも負担が大きく、こちらもつらいです。

■来院まで時間がかかると、診療した時には病状が変わっていることもありそうですね。

 

長谷川:そうです。本当に悲しいですが「来院できないくらい悪化してしまった」「亡くなってしまった」ということも起こります。
逆に「良くなった」ということもあります。これはいいことなのですが、単に「症状が出なくなった(わかりにくくなった)」結果、診断が難しくなることもあるんです。

■ちょうど本書を読んだとき、先生が犬の脳腫瘍の治療法を増やすためのクラウドファンディング活動を始められたので驚きました。それも、全国の大学やセンターの先生がたとチームを組んでいらして。キッカケをお聞きしたいです。

 

長谷川:犬の脳腫瘍は組織的にヒトととても似てるのに、この治療法はやってないな、と不思議に思ったんです。新たに獣医療で実施するには、薬の効果や安全性を調べることが必要なんですが、その薬品代の高さにびっくりして(笑)、これはもうクラウドファンディングしかないとほうぼうに声をかけました。
また、全国の脳外科医で集まったのには、症例を集めやすくするというのももちろんですが、本書にあるような、地方の患者さんもアクセスしやすいようにという想いがありました。

■科研費のような助成金でなくクラウドファンディングというのはどうしてですか?

 

長谷川:助成金は、研究者登録のある人以外は使いにくく、あらたに登録したりする手間や申請手続きも合わせると、より時間がかかってしまいます。そこでクラウドファンディングを始めてみたら、2日目で第一目標を達成することができ、チーム一同で仰天しました。犬の脳腫瘍は、ヒトより多く発症することも訴えたのですが、いただいたメッセージには飼い主さんからの声が多くありました。責任をひしひしと実感しましたね。

■全国の獣医師さんからの寄付も多いですね。二次診療につなげるために悩む獣医師さんの声でもあるのかな、と思いました。いまは第四目標をめざすところですね。

 

長谷川:治療法を確立するためには、症例数が必要です。第一目標額で3~4症例分、第二目標額では6症例くらい、第三目標で9症例分くらいの薬品が買えます。第四目標額(約12症例分)まで到達したら「症例報告」や「症例集積研究」よりエビデンスレベルが上の「研究論文」が書けるかもしれません。
すでに、チーム内で実施に向けて動いています。2023年5月31日の最終日まで、よろしくお願いいたします。




以上、獣医放射線学研究室 長谷川大輔教授からのコメントでした。

■関連ページ

【日本獣医生命科学大学論文セレクト】
長谷川大輔教授(研究者情報)
獣医放射線学研究室
「犬と猫のてんかん外科:導入完了、そしてこれから」

【図書館発ブログ「この一冊」より】
「救えない地方のペットたち 獣医療格差への挑戦の軌跡」