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日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

【新着論文】軽度慢性腎臓病モデルの開発

論 文 名

Establishment and application of a new 4/6 infarct nephrectomy rat model for moderate chronic kidney disease
(和訳)軽度慢性腎臓病モデル:4/6腎梗塞モデルラットの作製と応用検討


著者

菅井和久1)、平野桃子1)、小田朝陽1)、藤澤正彦1)、生野佐織2)、石岡克己3)、袴田陽二1) 他

1. 獣医保健看護学科 基礎部門 生体機能学研究分野
2. 獣医保健看護学科 応用部門 疫学・公衆衛生学研究分野
3. 獣医保健看護学科 臨床部門 臨床検査学研究分野


掲載雑誌

Acta Cirúrgica Brasileira, 2024 Mar. 11
Sociedade Brasileira para o Desenvolvimento da Pesquisa em Cirurgia
DOI: 10.1590/acb391324


研究内容

 慢性腎臓病(CKD)はヒトならびに獣医療において主要な疾患のため有効な治療法の確立が急務です。これまでCKDの病態解明ならびに新規治療法開発を目的に各種のモデル動物が開発されてきましたが、いずれもが末期CKDを模倣したモデルでした。今回、重症化する前の軽度CKDモデルラットを開発し、その有用性をサプリメント混合物(SC)を用いて検証することに成功しました。

 著者らは、従来の5/6腎梗塞モデルの手技を改良し、4/6腎梗塞モデルを開発しました(図1)。本モデルは5/6腎梗塞モデルよりも腎機能の低下による血中尿素窒素(BUN)とクレアチニン(Crea)の上昇および腎組織の障害が軽度で、腎性貧血を併発しない軽度CKDモデルであることが明らかとなりました。両モデルでSCの効果を検証したところ、5/6腎梗塞モデルではSCの効果は認められませんでしたが、4/6腎梗塞モデルではSCによるBUNの改善が認められSCの効果を顕在化することができました(図2)。CKDの病態解明ならびに治療法の検討には、研究目的に応じたモデルの使い分けが重要であり、4/6腎梗塞モデルは効果がマイルドな薬やサプリメントなどの評価にも有用であると考えられます。本研究は株式会社ウィズペティからの支援で行われました。

(文責:袴田 陽二)


腎梗塞モデル作製方法(図1)
5/6腎梗塞モデルは右腎の全摘出後、左腎動脈分岐の上枝と下枝の2本を結紮し、左腎組織の2/3を梗塞させるモデルです。4/6腎梗塞モデルは右腎の全摘出後、左腎動脈分岐の上枝1本を結紮し、左腎組織の1/3を梗塞させるモデルです。どちらのモデルも一期的に両側の腎臓を処置することで、外科侵襲を減らし、個体間の誤差を最小限に抑えることができます。

腎梗塞モデルの特性比較(図2)
4/6腎梗塞モデルは5/6腎梗塞モデルよりも血中尿素窒素(BUN)とクレアチニン(Crea)の上昇が軽度です。また、4/6腎梗塞モデルではサプリメント混合物(SC)によりBUNが改善され、SCの効果を顕在化しました。5/6腎梗塞モデルではSCあり群でBUNとCreaが上昇していますが、これはSCによる影響ではなく、5/6腎梗塞モデルが重度CKDに進行したためです。


■研究者情報



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