当館は学芸員課程の博物館実習施設として2015年4月に「ワイルドライフ・ミュージアム」と命名し、開館しました。その後、本学がわが国最初の私立獣医学校として創立された歴史的意義を踏まえ、わが国における獣医畜産学の歴史的資料の収集・展示にも力を入れてきました。さらに、当館が設置されている一号棟が2020年4月に国の登録有形文化財となったことを受け、建物の保存・復元や市民公開等を通じた利活用が求められるようになりました。
そこで、こうした経緯や社会的要請に応えるべく、2023年4月からは「日本獣医生命科学大学付属博物館」と名称を変更し、本学の歴史と獣医・畜産・生命科学の総合博物館を新たなコンセプトに掲げて再スタートしました。
自然系展示室は里山の野生動物を中心とした展示を充実させ、歴史系展示室では140年以上にも及ぶ本学の歴史とともに獣医畜産学の発展や人と動物の関係性の変遷をたどれる展示を行っています。 また、ミニ展示や特別展示では本学における最新の特色ある研究内容を公開し、その成果の社会への還元を目指しています。
最近では当館所蔵のキリンの全身骨格標本が、かつて上野動物園で飼育されていた「長次郎」であったことが明らかになり、企画展にて取り上げるほか一般の方を招いたイベントを開催するなど活動の幅を広げています。
歴史が感じられる建物で様々な展示をいつでもどなたにでもご覧いただけるよう、今後とも努力してまいります。
引き続き当館へのご来館並びにご支援のほどお願い申し上げます。
2025年4月1日
館長 神代浩
当館は2015年度に付属ワイルドライフ・ミュージアムとして開館したのち、2023年度に付属博物館に改称しました。当館が活動拠点としている一号棟の中には3つの展示室(歴史系展示室・自然系展示室・定期交換展示室)が設けられ、それぞれ特色のある展示を行っています。見学の際は事前のご予約をお願いしておりますが、大学のイベントなどに合わせた特別開館の際には自由に見学することもでき、2019年度には開館からの累計来館者数が1万人を突破しました。
当館では、学内関係者に向けた活動として、講義・実習の場として展示室を開放するほか、標本の貸し出しを行っています。また、本学にて学芸員課程を受講する学生の博物館実習(学内実習)の場としての役割を担っており、希望する受講生を対象に、博物館の活動に参加する機会を設けるほか、展示場所を提供しています。
学外の方に向けた活動としては、学内外のイベントに合わせたワークショップの開催や、地域イベントへの協力を行っています。
当館では以下の資料の収集・保管を行っています。
[歴史資料]
[自然史資料]
これまでに、1,103点(歴史系資料476点、自然系資料627点)のリスト化が終了しています。その他の未整理の資料については、目録作成に向けた資料整理作業を続けています。
(資料数は2023年3月23日時点の情報です)
博物館の展示室が設置されている一号棟(本館)の歴史は、1909(明治42)年まで遡ることができます。この年の6月、麻布市兵衛町2丁目(現 港区六本木3丁目)にて、麻布区役所の庁舎が竣工しました。この庁舎は1923(大正12)年の関東大震災を乗り越え、約20年間活用されましたが、1935(昭和10)年に東鳥居坂町に新たに建てられた庁舎での業務が開始されると、麻布市兵衛町の庁舎は役目を終え、使われなくなりました。
このころ、現在の校地である武蔵野町(現 武蔵野市)に、本学の前身校である私立日本獣医学校が移転します。この時、使われなくなっていた麻布市兵衛町の区役所庁舎を買い取り、移築したものが現在の一号棟です。この「一号棟」という名称は現在のものであり、当時は「本館」と呼ばれていました。
一号棟は、都内に唯一現存する明治期の役所建築としての価値が認められ、2019年11月15日開催の国の文化審議会文化財分科会において、国の登録有形文化財(建造物)に登録するよう、文部科学大臣に答申されました。2020年4月には、「旧東京市麻布区役所庁舎(日本獣医生命科学大学一号棟)」の名称で、国の登録有形文化財(建造物)として正式に認められました。
麻布区役所庁舎(出典:東京市麻布区(1941)「麻布区史」)
現在の一号棟