日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

教員インタビュー

新分野の獣医をめざしてきたので、授業を代わってもらえる先生が見つかりません。

獣医学部獣医保健看護学科
教授 水越 美奈

新しい分野の獣医師になろうとアメリカ留学

街の獣医さんになりたくてこの大学に入りました。今は犬や猫の行動診療および人との関係を研究テ ーマとしています。
人間の自傷行為と同様に、犬や猫もストレス等が原因で、自分の尾を噛んだり毛をむしることもあります。人間に発症する強迫性障害に似た症状や、攻撃、不安症や恐怖症なども存在します。こうした領域を扱う獣医師や研究者が当時は日本にいなかったので、30歳を過ぎていたのですがアメリカ留学を決めました。
帰国後は、動物の行動をより勉強するために大学院で学び博士号を取得。学位取得後、本学の獣医保健看護学科に教員として入職しました。

女子学生は多いが、なぜ教員にはならないの?

研究することが楽しくて、結婚もしていません。同級生などが子育てをしている時期に、私はアメリカで面白い研究テーマと出会ってしまった。
もう少し将来のことをきちんと考えておけばよかったのかもしれません。でも、50歳代半ばとなった今思うと、出産などで研究の現場を離れていたら、今のような仕事はできていなかっただろうと思います。
そんな時代でした。そういう意味で、今を羨ましく思うこともあります。
本学でもまだまだ女性教員が少ないです。獣医保健看護学科は女子学生が圧倒的に多く、また獣医学科も女子が半数以上になるまでに増えていますが、大学院に進むことを躊躇する人は多いのかもしれません。大学を卒業してすぐに大学院に進まなくていいし、私も学位を取ったのは40歳の時でした。大学院に入ることは、いくつになってもできると伝えたいです。

寄り道も大切とわかる時が来る

男性と比較して、女性が結婚・出産によってキャリアアップに遅れをとってしまうのは、言い方は難しいですが、仕方がないこととも言えます。私も正当な研究者の道を歩んでは来てはいません。いろいろ寄り道しながら今に至っています。しかし、その寄り道が人脈形成につながるなど、いつの間にか研究に役立っていたりするものです。寄り道とか道草も無駄ではないと思っています。
40歳間近で大学院に入るまで、研究者ではなかったし論文による業績もありませんでした。今でも論文の数は同年代に比較すると圧倒的に少ないと思います。大学からストレートにキャリアアップを果たしてきた人とは20年近くの差がありますが、それが不利だとか、後悔するとかは少しもありません。
キャリアの積み上げ方法がもっと自由になっていいと思います。今は少しずつそうなってきているとは思うけど、もっとそうなっていけばいいと思います。

「仕事が趣味でしょ」と言われるけれど

犬や猫のしつけも専門分野なので、自治体などからあの講演依頼などもよくあって、それが土・日になることが多いです。母に言わせると「あなた、休もうと思っていないのね」と(笑)。
家でも犬と猫と暮らしています。泊まりを伴う仕事がある時は、親に預けています。
両親は今のところ元気にしていますが、高齢なので介護のことも考えなければ、と思っています。同居はしていませんが、日常の買い物や食事を作りに行ったりしています。
大学の近くに住んだ方が、私としてはラクなのかもしれませんが、そういった理由で通勤時間はかかりますが、両親の近くに住んでいます。周囲からは「仕事が趣味でしょ」とも言われますが、プライベートな趣味はちゃんと別にもあります。主に歌舞伎や文楽などの芝居鑑賞です。