日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

教員インタビュー

昼は子どもと遊び、寝ついたら夜通し研究、裁量労働制でワークライフバランスを維持しました。

応用生命科学部動物科学科
教授 小澤 壯行

誰もしていない研究に挑む醍醐味

酪農関係などいろいろな研究をしています。たとえば今、カウブラシという牛用の洗浄機があるのですが、その効果を調べています。誰もやっていないことに取り組むのがおもしろい、それこそが研究の醍醐味です。
すごく身近な動物のはずなのに、意外と誰もしていないのがヤギに関する研究。ヤギミルク、ヤギ肉の栄養価はどのくらいあるのか、ヤギを飼う経営は成り立つのか、など。
研究=仕事=人生」なので、自分の調べたいことを研究対象としています。

博士課程以後のキャリアの問題

職場に女性教員はいますが、少ないです。そもそも女性の応募数が永らく伸びていません。女性のキャリアパスの問題では、男女共同参画社会基本法に則って、女性をある一定数採用しようとする際に、応募数が少ない中で、その人の能力や実績を見ずに性差で判断するのはどうかと思います。「ダイバーシティ」とうたいながら、逆に性差を強調することになっていないでしょうか。
学内の制度というより、それ以前の問題です。博士課程まで行った後のキャリアが具体的に見えない、というところが一番大きいのではないでしょうか。昨今は、男女問わず言えることです。とくに本学の動物科学科は、修士課程までは多いのですが、博士課程は少ないのが実状です。

まずは行使できる制度・権利の周知を

子どもはふたりいます。共働きなので保育所に預けていましたが、ちょっと熱が出ると保育所から「迎えに来て」と電話が来る。妻よりも大学教員の自分の方が時間に融通が利くので迎えに行っていました。少し熱があっても預かってくれるような保育施設があるといいのかなと思います。
今でも思い出すと胸が痛くなるのは、引っ越しをした時に、タイミングが悪く、子どもを保育園に入れなかった時期のことです。仕方なく駅前のベビーホテルのようなところに預けに行っていたのですが、送っていく道中で子どもが泣いて嫌がるのですね。その声は今でも耳に残っています。職場に保育施設があったらいいな、とその時ほど思ったことはありません。
それから、当時助かったのは保育料補助制度。誰もが知っていることだとは思うのですが、当時の自分は調べてわかったことだったので、もっと大々的に告知すればいいのにと思いました。
あらゆる制度や権利に関しても言えることですが、行使できなければ意味がありません。必要な人に届くように、知らしめることが重要なのではないでしょうか。聞かないと教えてくれないという状態ではいけないのですよね。定期的に、こういう制度がある、と知らせてくれないと。

子どもの相手をした後に、寝袋持参で夜通し研究

自分ではしていたつもりでしたが、妻からは育児にまったく協力的ではなかったと言われます。
私は大学院では修士課程しか出ておらず、後から博士号を取ったのですが、博士号のための勉強をしなくてはいけない時に、子どもがまだ小さかったのです。同僚から「子どもが起きている時には子どもと遊んであげなくちゃ。自分の勉強は子どもが寝てから」と言われてショックを受けました。そのとおりだな、と。
ですので、当時は子どもが寝てから寝袋持参で研究室に行って、泊まりがけで研究をするという生活を続けていました。若いうちはそういうこともできたのですね。
家事に関しても、もっとできたかもしれないと、今になって後悔しています。妻は働きながら子育てをしていたので本当に偉いと思います。当時は、子どものことと仕事との真っただ中にいて大変でしたが、今になって思えば良い思い出です。

ワークライフバランスを維持するための裁量労働制

ワークライフバランスは良い方じゃないでしょうか。私の仕事は裁量労働制なので時間の融通が利き、助かっています。今の自分のポジションが教授なので、上の方がいない分、ある程度好きなように決められますが、上司がいる役職の人は大変だろうと思います。年下の同僚の先生には、「ですます調」で話すなど、話し方も含めてできるだけ気を遣うようにしています。
今のポジションについて言うと、2013年から担当している学科長の仕事は精神的な負担も大きく大変です。それさえなければ研究をもう少しできると思うのですが。
また、23時には学校を出ないといけないので、昔のように泊りがけでの研究などはできません。もうちょっとやりたいのに、という学生もいます。教職員の「働き方改革」にしても、大学職は裁量労働制だからこそ成立している部分があります。仕事量と労働時間は、タイムカードで計れるものではありません