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教員からのレポート

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食品セミナーI(オーストラリア実習)に参加して

教授(ポストアップ)江草 愛

 2025年9月7日から15日まで、オーストラリア・ブリスベンを舞台とした海外実習を実施し、教員として引率を行いました。本実習は、野生動物とのふれあいや保護活動、海洋環境問題などをテーマに、現地での体験を通して、実践的で深い学びを得ることを目的としています。

 実習に先立ち、事前学習の機会が複数回設けられており、現地に向かう前の予備知識をしっかり習得します。英文の資料も含め、基礎的な知識を身につけておくことで、現地で専門的な英語に触れた時にも焦らず対応することができるようになります。教員によるレクチャーの他、オーストラリア大使館商務部の方による留学や現地生活関する質疑応答の機会もあるため、自然と実習に対する心構えが整い、期待感も高まるように設計されています。なお、本実習は、学部・学科を越えて開催されるため、普段接点のない学生同士でも、交流を深められる絶好の機会となっています。

 成田空港を夜に出発し、約9時間のフライトを経ると、目覚めるころには、オーストラリアに到着です。時差がほとんどないため、体調を崩す学生もおらず、到着後はバスに乗り換えて、ノース・ストラドブローク島にあるクイーンズランド大学のモートンベイリサーチセンター(MBRS)に向かいました。ここは島全体が野生保護地区になっており、お昼寝をするカンガルーやコアラたちを自然な環境の中で観察することができます。また、海に目を向ければ、イルカの群れやクジラの泳ぐ姿も見られます。食品分野を志す学生にとっても、大自然の営みに強い感動を覚える景色が広がっています。この島ではクイーンズランド大学の研究者によるレクチャーを受けたほか、海岸での海洋デブリ(海のごみ)の調査や、プランクトンの採集・観察を行い、海洋学に関するアカデミックな経験をしました。1泊2日の島での実習後は、大都市ブリスベンに移動しました。

▲図1:ノース・ストラドブローク島からの海の眺望

 滞在3日目はブリスベンから少し離れた食肉処理施設(屠場)を見学しました。日本では立ち入ることができないコースを見学させてもらい、貴重な体験となりました。学生たちは真剣な表情で「食糧とは何か、命とは何か」について学んでいました。慣れない英語を使いながら、施設のスタッフに沢山の質問をしていた学生の様子からも、実習の成果を強く得感じた次第です。

 また、実習後半は、動物保護センターであるRSPCAや、オーストラリア野生動物救護リハビリセンター(WRREA)を訪問し、保護が必要になった野生動物の医療やリハビリの現場を見学してきました。いずれのセンターでも、活動の多くが寄付やボランティアによって支えられており、それが市民の間でごく自然に行われている点に、日本との違いを改めて感じました(金銭的な寄付が難しい場合には、ボランティア活動という形で貢献するなど)。さらに、ゴールドコーストのカランビン・ワイルドライフ・サンクチュアリーも訪れ、多様な野生動物と触れ合う貴重な機会を得ました。日本では見られない独自の進化をした動物が数多くおり、動物好きには至高の一日だったと思います。

▲図2:自然保護区内のカンガルー

 滞在6日目には、クイーンズランド大学のセントルシア・キャンパスも訪問し、広い敷地内や24時間営業の図書館に学生達は驚きを隠せない様子でした。現地学生との交流も実施され、主体的学ぶ姿勢を目の当たりにして、大きな刺激になったようでした。最終日は自由行動とし、それぞれが事前申請した希望の場所へ向かいました。片道2時間かけてテーマパークへ行ったり、近場でブリスベン市内の「食べ歩き」に興じたりなど、各人が思い出に残る時間を過ごしたようです。(尚、私は畜産食品を専門としているので、現地の食肉加工店にてハムやソーセージ、豚足の燻製などを買い求め、その晩はホテルで「お肉パーティー」となりました。)

▲図3:広大なクイーンズランド大学のキャンパス

 事前学習から現地実習まで、内容が濃く、実り多い1週間となりました。本実習の実施にあたり、現地で対応してくださったコーディネーターの皆様や、実習を支えてくださった卒業生に、心より感謝申し上げます。

▲図4:ハムのショーケース

▲図5:皿に盛ったハム

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