培養肉開発を促す大きな動きに「SDGs」があるというのが本書のテーマのひとつでした。食品科学科の多くの研究は、SDGsにつながっています。
乳肉利用学教室では、チーズ製造過程で生成される乳清(ホエー)の用途開発なども研究しています。これは新たな栄養食品開発であるとともに、廃棄物ゼロにつながる取り組みでもあります。 その乳肉利用学教室の三浦孝之准教授がコメントを寄せてくださいました!
『クリーンミート 培養肉が世界を変える』
ポール・シャピロ著・鈴木素子訳(2020年 日経BP)
「畜産」という産業に軸を置く私達にとっては、一見なんとも悩ましいタイトル、しかし今だからこそ無視できない話題です。
私が知る限り70年代から、代替肉やイミテーションチーズ等々、畜産食品の代替物に関する研究が行われていました。
この頃の研究は主にコスト削減が目的でしたが、近年ではSDGsやヴィーガニズムの思想が噛み合い、今や「非畜産物食品」がビジネス業界でトレンドワードになっています。
注)ヴィーガニズム:できるだけ動物から搾取することなく生きるべきとする主義。食事から排除するだけでなく、あらゆる動物製品を拒否する考え方もある。
既にビジネス化されている、大豆ミート等のように植物由来の代替肉は技術的に目新しいことは殆どありません。しかし、本書でクリーンミートと呼んでいる細胞を立体培養した培養肉の研究は再生医療の研究と並行して進んでいたもので、一昔前までは研究者にとっては夢のような話でしたが、ビジネスに結びつきそうなところまで研究が進んでおり、研究者として純粋な喜びを感じます。
とは言え、このような研究は反対派や賛成派など分かれて論争が起きやすく、白黒付けたがるのも人の性。どちらも正論、多様化する世界ではどちらか一方を無くすことは出来ないし、共存していく他ありません。
幸いにも畜産系アカデミアに関わる学生諸君(私も含めて)は畜産業の重要性を理解できる立場にあると思うので、是非、関心をもって積極的にこのような本を読むなどして、自分たちが関わる業界にどのような問題があるのかをニュートラルに判断できるような人材になって欲しいと思います。
以上三浦准教授からのコメントでした。
このところ、培養肉や昆虫食などに関する報道が相次ぎました。本学にもアニマルウェルフェアに関する本が増えていますが、それだけでなく地球環境への負担の軽減もできるとあって、これから無視できないテーマとなってくるでしょう。
培養肉に関する本も増えてきそうですね!