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【新着論文】人獣共通寄生虫の東洋眼虫は、関東近郊の多様な食肉目の動物から見つかる

論 文 名

New host record of Thelazia callipaeda (Nematoda: Spirurida) with a notably wide host range and shared zoonotic lineage in Japan
(和訳)広範な宿主域と人獣共通の系統をもつ東洋眼虫(線形動物門:旋尾線虫目)の新宿主報告


著者

常盤 俊大1)、山本 俊昭2)、加藤 卓也3)ほか

1. 獣医学科 獣医寄生虫学研究室
2. 獣医保健看護学科 応用部門 保全生物学研究分野
3. 獣医学科 野生動物学研究室


掲載雑誌

Parasitology International,(2024,102, 102913)
Elsevier


研究内容

 東洋眼虫は、眼の表面に寄生する人獣共通の線虫です。これまで犬や猫、人の症例が西日本を中心に報告されてきましたが、近年、関東以北からの報告も目立ち、流行地域の拡大が懸念されています。本種はメマトイとも呼ばれるPhortica属のハエ類によって媒介され、関東郊外では、アライグマやタヌキ等が自然宿主になることが知られていますが、生活環の詳細は明らかではありません。本研究では、有害捕獲あるいは交通事故死した動物の眼を調べ、ホンドギツネ、ニホンアナグマ、ハクビシン、ツキノワグマが東洋眼虫の新たな宿主となることを明らかにしました。さらに国内外の東洋眼虫の遺伝子配列と比較したところ、日本からのみ報告されている3つの系統(h9・h10・h12)が、これら野生動物や人、犬、猫に広く流行していることがわかりました。

 関東近郊の低地の森林や公園では東洋眼虫を媒介するメマトイ類が生息しています。個体数が増加傾向にある都市型野生動物のハクビシンやアライグマ、タヌキが東洋眼虫の宿主になることは、人や愛玩動物への東洋眼虫の感染リスクが高まることを示唆します。

(文責:常盤 俊大)




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